想像が生んだ世界の妖怪や怪獣 不思議で不気味な空間をたずねる
怪談にお化け屋敷、ホラー映画……。私たちはどうして怖い物に魅かれるのでしょうか?
百鬼夜行絵巻や四谷怪談の昔はともかく、科学が発達した現代でも「千と千尋の神隠し」や人気アニメ「妖怪ウォッチ」、映画「ロード・オブ・ザ・リング」に「スター・ウォーズ」と、洋の東西を問わず怪獣・妖怪が跋扈(ばっこ)しています。人間の想像力が生み出す怪しい不思議の世界の源を探るのがこの展覧会です。
まずは日本、数多(あまた)の妖怪の中で全国至る所に出没するのが「河童」です。九州代表は「九千坊」でしょう。中国・黄河から一族を引き連れてやってきた9千匹の河童の大親分で、加藤清正に攻められたため球磨川から筑後川に移り住んだと伝えられます。久留米市田主丸町の馬場瀬神社に祀られているのが左上の写真『九千坊像』です。高さ30センチほどの木像はふだん非公開のため、お目にかかれる貴重なチャンスです。
九千坊像(左)・沙悟浄像(右)
馬場瀬神社蔵
その下の写真『トゥピラク』は、グリーンランドのイヌイットが宗教儀式に使っていた悪霊です。姿はアザラシがモデルで、人間界と魔界の境界を変身して行き来します。でも顔は目を丸くして驚いているおじさん風で、なんとなく愛嬌を感じます。今では先住民の芸術品として、土産物にもなっています。
トゥピラク(グリーンランド)
国立民族学博物館蔵
撮影:大道雪代
最後は、宇宙人のような『ヴェヒガンテ衣装』です。頭に鋭い角が3本、体は赤と黒の強烈なコントラストで、カリブ海の島・プエルトリコの祭りに登場する悪魔です。アフリカとスペイン、カリブの文化が交りあい、植民地時代は抵抗の象徴ともなりました。奴隷制度のなかで、恐るべきは限りない人間の欲望だったのでしょう。
ヴェヒガンテ衣装(プエルトリコ)
国立民族学博物館所蔵
撮影:大道雪代
今回は、人魚の骸骨や求菩提山の天狗像、メキシコのクモ仮面など、国内外の凡そ300点が展示されます。人々の生活や歴史、地域の自然と深く結びついた想像の生きものたちは、何かを語りかけてくれるに違いありません。
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。
福岡近郊博物館・美術館のスケジュール
※( )内の料金は、特別・前売り・団体料金、詳細はお問合せください
■九州国立博物館
特別展 加耶
~3月19日(日)
●一 般 1,700円
●高大生 1,000円
●小中生 600円
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)
■福岡市博物館
特別展「驚異と怪異―― 想像界の生きものたち」
悪魔仮面(メキシコ)
国立民族学博物館所蔵
撮影:大道雪代
3月11日(土)~5月14日(日)
●一 般 1,600円(1,400円)
●中高生 1,200円(1,000円)
●小学生 800円(600円)
休館日:月曜
☎「驚異と怪異」福岡展事務局
092・711・5491
■久留米市美術館
リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと
横山奈美
《逃れられない運命を受け入れること》
2016年 gigei10蔵
~4月2日(日)
●一 般 1,000円(800円)
●65歳以上 700円(500円)
●大学生 500円(300円)
●高校生以下 無料
休館日/月曜
☎0942・39・1131
■北九州市立美術館本館
コレクション展Ⅲ 特集 浮世絵に見る江戸の名所
歌川広重
《名所江戸百景
深川洲崎十万坪》
1857年 前期展示
前期 ~3月5日(日)
後期 3月18日(土)~5月7日(日)
●一 般 300円(240円)
●高大生 200円(160円)
●小中生 100円(80円)
※展示替えがあります。
休館日/月曜(ただし祝日の場合は
開館し、翌火曜が休館)
☎093・882・7777
■ゼンリンミュージアム
企画展 17世紀の日蘭交流 選ばれし国 おらんだ
~5月14日(日)
●一 般 1,000円(800円)
※保護者同伴の小学生以下は無料
休館日/月曜(ただし祝日の場合は
開館し、翌平日が休館)
☎093・592・9082
●新型コロナウィルス感染拡大防止のため、休館・展覧会が中止・延期される場合があります。
お出かけ前に各施設のホームページなどで確認してください。