日本のグラフィック・デザインの先駆者!絵画に詩、歌謡、童画と多彩な活動を紹介
たおやか。夢二の絵によく使われる形容詞です。姿かたちがほっそりとしていて、動きがしなやかという意味です。具体的なイメージは、左の2つの作品を見れば一目瞭然です。
そのひとつ、横長の屏風絵が『春の夜』です。こたつで横になって本を読む娘、布団の上では猫が居眠りしています。柔らかな色彩は日本画の顔料が使われています。
もうひとつの縦長の『春の雪』は、振り袖姿の娘が羽根つきをしています。帯が美しい着物の後ろ姿を夢二は好んで描きました。床の間に掛け軸として飾られたのでしょうか、新春の今の季節にぴったりの作品です。掛け軸や屏風に限らず、夢二は乞われるままに様々な素材に絵を描きました。
作品にはそれぞれこの記事の下に記載している詩が添えられています。夢二は画家でもあり、詩人でもありました。♪待てど暮らせど来ぬ人の… 有名な「宵待草」も作詞しました。ひと夏の思い出を綴ったと言われ、恋多き人生が垣間見えます。
今回の注目は、上の『ノスタルジア』です。暗い色調の油絵で、20年ほど前にロサンゼルスの日系人の家で発見されました。晩年、欧米を外遊した時の作品で、思うように絵が売れず苦しんだ心境があらわれています。
岡山県で生まれた夢二は、創業時の八幡製鉄所で働いた後17歳で単身上京、明治の終わりに人気画家となりました。年号が変わり、女性解放に普通選挙と“大正デモクラシー”が開花した時代にしっかりと庶民の心をつかんで、大正ロマンを代表する画家と評されます。
その活動は、雑誌の挿絵や楽譜の表紙、歌に童画と多岐に渡ります。関東大震災の後の街を歩いて、新聞にスケッチも連載しました。市民生活と結びついた芸術は、日本のグラフィック・デザインの草分けともいわれます。今回は、九州初公開の「南枝早春」をはじめ、写真や新聞記事など約260点が展示されます。
揺れ動く時代を歩んだマルチタレント・夢二を見つめ直すチャンスです。
①「春の夜」紙本彩色 昭和初期
②「春の雪」紙本彩色 昭和初期
③「ノスタルジア」板・油彩 昭和6〜7年
■絵に添えらえた詩
「春の夜」
春雨にしとどにぬるる鶯の なかずもあれや梅が香の匂ふ春の夜 新潟夜曲
「春の雪」
紫に 築地も暮る 春の雪
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。
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■九州国立博物館
特別展 加耶
金製耳飾り
陜川玉田M4号墳出土
<大加耶>6世紀前半
韓国国立晋州博物館蔵
1月24日(火)~3月19日(日)
●一 般 1,700円(1500円)
●高大生 1,000円(800円)
●小中生 600円(400円)
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)