鉄を加工し、金で飾った華麗な人々 朝鮮半島との文化交流の原点を探る
韓流ドラマでお茶の間にも浸透した韓国文化、その交流が盛んだったのが古墳時代です。
加耶とは3~6世紀に朝鮮半島南部にあった国々で、中学生の頃の教科書で「任那」と習った記憶があります。地域の違いなどから、金官加耶、阿羅加耶、小加耶、大加耶の4つの国に代表されます。この地の墳墓の発掘調査から、日本との深いかかわりがわかってきました。
金製耳飾り 陜川玉田M4号墳出土
(6世紀前半、韓国国立晋州博物館蔵)※右側のみ
左上の写真『金製耳飾り』は、金の鎖とその先に垂れ下がる木の実の形が特徴的です。細工も細やかで、今でもイヤリングとして使えそうです。金の鎖をデザインした同じような耳飾りは、日本国内でも各地で見つかっています。大加耶の墳墓からは、王の権威を示す金銅の冠をはじめ、金や銀のアクセサリーがいくつも出土していて、華麗に身を飾った王族の姿がうかがえます。
一方、力強さを示すものもあります。写真右下の『有刺利器』は錆びていささか無骨な姿ですが、よく見ると周囲に鳥の姿の細工がついています。鉄の塊を短冊形に加工したもので、儀式に使われました。鉄は、刀などの鉄器の材料や貨幣、亡くなった有力者の副葬品に使われただけでなく、日本にも持ち込まれました。半島の鉄を原料にした弥生時代の鉄剣で、長野県から出土した長い剣も今回展示されます。
こうした金や鉄は、半島から渡ってきた人びとがもたらしたものです。それを象徴するのが、写真左下の『渡来人形埴輪』です。千葉県で出土した埴輪で、長い筒袖の上着は何となく異国風です。持ち込まれた文化や技術は、農耕や牛馬の飼育に乗馬、料理や器といった日常生活まで、幅広く大きな影響を与えました。
加耶の至宝がまとまって国内で展示されるのは実に30年ぶり。「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」がコンセプトの九州国立博物館にとっては、真骨頂ともいえる展覧会です。日韓の交流の歴史の深さと広がりを探る貴重なチャンスです。
左:
《千葉県指定文化財》
渡来人形埴輪
千葉県市原市・山倉1号墳出土
(6世紀、市原市教育委員会蔵)
右:
有刺利器 咸安道項里(文)
10号墳出土
(4世紀末〜5世紀前半、
韓国国立金海博物館蔵)
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。
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■九州国立博物館
特別展 加耶
2023年1月24日(火)~3月19日(日)
●一 般 1,700円(1500円)
●高大生 1,000円(800円)
●小中生 600円(400円)
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)
久留米市美術館
■生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎
坂本繁二郎《放牧三馬》
1932年
石橋財団アーティゾン美術館蔵
~2023年1月22日(日)
●一 般 1,000円(800円)
●65歳以上 700円(500円)
●大学生 500円(300円)
●高校生以下 無料
休館日:月曜(1月2日、9日は開館)
年末年始(12月29日 ~1月1日)
☎0942・39・1131