映画『七つの会議』
作:池井戸 潤 監督:福澤克雄
出演:野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助、北大路欣也 他
配給:東宝
◎2月1日(金)よりTOHOシネマズ天神・ソラリア館、ユナイテッド・シネマ 福岡ももち、T・ジョイ博多 他にて公開
スーツを着た平成時代劇
「半沢直樹」シリーズ、「下町ロケット」など、企業の矛盾やそこで働く人々の葛藤や絆を描くベストセラー作家・池井戸潤の作品群の中でも傑作との呼び声が高い企業犯罪エンターテインメント『七つの会議』がいよいよスクリーンへ。結果至上主義の会社で理不尽なノルマを押し付けられるサラリーマンたちの姿に共感する人は多いはず。
主人公の中堅メーカー・東京建電の万年係長である八角民夫(通称ハッカク)を演じるのは、狂言師であり俳優としても唯一無二の存在感を放つ野村萬斎さんだ。
そもそも「現代劇で普通のサラリーマンを演ってみたかった」という萬斎さん。初顔合わせで黒のスーツにネクタイを緩めに締めて無精髭を生やし「八角はこういうキャラクターでどうですか?」と提案したところ、監督にとても喜ばれたのだとか。
「あまり大げさにならないよう演じようと思っていたんですが、みなさん、いきなりフルスロットルで来るので。まるで顔相撲ですね。共演者の方々と総当たりしていくのはすごく楽しかったです。もちろん、同僚であり好敵手でもある営業部長・北川誠役の香川照之さんとはいちばん濃く絡ませてもらいました。香川さんが耳まで動かしながらグッと顔を寄せて来るならこちらはちょっとのけぞろうか、とか。お互いにキャッチボールをしながら演じました」
撮影現場の雰囲気は?
「元慶応ラグビー部の福澤克雄監督が率いる現場は非常に体育会系で熱量があって狂言の稽古のようでもありました。まさに肉弾戦、格闘技にも似た「肉を切らせて骨を断つ」ような演技の質を求められる。“御前会議”のシーンなんて、もうはっきり言って時代劇です。スーツを着た平成時代劇。単なるサスペンスに終わらない、緊張感のある、とても新しい映画に仕上がっていると思います」
今、日本人に問う働くことの正義とは?
萬斎さん扮する八角はどこの会社にもいる、いわゆる“ぐうたら社員”。だが、彼が上司をパワハラで訴えたことがきっかけで社員たちの人生はおろか会社そのものの存続を揺るがす事態に発展していく。
己の正義のために出世コースから外れる八角か?会社の正義を受け入れ絶対権力を振るう北川か?萬斎さんならどちらを選ぶのだろうか?
「八角の方かな。僕自身、そこを譲ったら狂言でなくなってしまうとか、本質を失うことに関しては敏感だと思うので。古典芸能を今の時代に合わせてアップデートすることは必要だけど、そこにひとつ、ガンとして揺るぎない精神がなければいけない。だから自分で地に足をつけ、信念を持って、正義を、ものごとの本質を貫く八角の姿勢に共感できますね」
日本の企業に連綿と息づくヒエラルキーと、その中でねじ曲がっていく正義とは?
「劇中で、僕の別れた妻・淑子(吉田 羊)が端的に言い得ているんじゃないかな」と萬斎さん。
「『サラリーマンって難しいね』っていう、あの一言で」