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【ぐらんざ人】演出家 いのうえひでのり × 俳優 古田新太

【ぐらんざ人】演出家 いのうえひでのり × 俳優 古田新太

2019年劇団☆新感線39興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』


憧れの劇場・博多座で39年目のチャレンジ

 演劇界で圧倒的人気を誇る、劇団☆新感線。舞台の上だけに留まらず、映画館やBS・CS放送でも彼らの芝居は上映されファンを増やし続けている。劇団旗揚げから39年、博多座誕生から20年、満を持して彼らが博多座にやってくる。劇団の主宰であり演出家のいのうえひでのりさんと、看板役者の古田新太さんに意気込みを伺った。

「博多座はずっと憧れていたのですが、ハードルが高かったんです。博多座の席数は約1500。この席数を地方で長い期間やるのは初めてで、埋まるのかという不安もあって」と言ういのうえさんに、古田さんも「我々完全にビビッてますから(笑)」と口を揃える。

 今回上演されるいのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』は、神話や史実などをモチーフにした時代活劇「いのうえ歌舞伎」シリーズの最新作。地方公演では難しいとされていた、大がかりな舞台装置を用いるフルスペックのいのうえ歌舞伎だ。

「立派な劇場なんで、ガチっとフルスペックで上演することができる。こういう本格的な時代劇って、最近は滅多にないので九州中から足を運んでもらいたいですね」といのうえさんは語る。

ぐらんざ世代にこそハマる新感線の感性

 演目名に、“もう一つの”を意味する“alternative”を冠する今回の作品。その意図とは?

「いのうえ歌舞伎は、少年漫画のような熱い男の冒険ドラマが多い。ただ、古田くんをはじめ新感線の劇団員が中心になる話だと、平均年齢が50歳前後で少年漫画的に暴れまわるのはさすがにきつい(笑)。もう少し劇画的、漫画娯楽的なオルタナにチャンネルを変えようかと。また全然違う楽しみがあると思います」

 古田さんは「大人向けのお話なんで、オイラたちと同世代の50代60代の方にも楽しんでいただけると思います。ぜひお越しください」とぐらんざ世代にメッセージを送る。

「笑いとか色んな感覚って、同じ時代の空気を吸ってきた同世代の方が伝わるものがある。演劇ってそういう時代性と共通しているんで、若い人よりもぐらんざ読者さんの方がビビットに新感線の演劇に反応するかもしれない。世代的に一緒の方が『わかる、わかる』ってハマると思います」といのうえさん。

黒澤明×太宰治で落語のような芝居

 物語の舞台は、戦国時代。同盟を反故にされたため、政略結婚を解消し嫁ぎ先を飛び出してきたお姫様。彼女を奇策で守り、旅路を共にするのは、人生も後半に差し掛かった浪人二人と若き家臣。彼らに一癖も二癖もある追っ手が襲い掛かり…。脚本を手掛けたのは、今回2度目の新感線参加となる倉持裕さん。いのうえさんは倉持さんにある注文をつけた。
「黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』に太宰治の『走れメロス』が組み込まれるような脚本にしてくださいと。出来上がったら、両方の要素が上手いこと入っている。時代設定や人物の置き方が黒澤映画を意識しているところがありますね」

 主役の浪人軍配士・真中十兵衛を演じる古田さんは、「脚本読んで、落語じゃねぇかよって思いました。それくらい倉持が書く台詞が面白いんですよ。十兵衛はペラペラよく喋るんですが、オイラは台詞が沢山あるのは好きじゃない。倉持は『喋ってる古田さんが好きでそういうのを書いてしまうんです』って。勘弁してくれよ(笑)と思いながらも、頑張っていこうと思います」

 十兵衛の人物像については「感情に走るタイプではなくて頭が切れるけど、人間的に欠陥があるから仕官できていない。いかに戦わずに姫たちを逃がすかということを考えている人なんで、オイラ自身の立ち廻りはそんなに数はないですね。でも最終的には、早乙女太一くんと闘わなければいけない。そこが憂鬱ですねぇ(笑)」と古田さん。

やりたいことが達成できていない幸せ

 今回の公演は旗上げから39年目を記念した「39(サンキュー)興行」でもある。当初は学生だった二人も、今やぐらんざ世代。古田さんは「体の衰えはありますが、役者としてのスキルは上がっている。若い頃は力んでばっかりだったけど、50歳も過ぎるとここは引いた方がいいぞとか、押し引きができるようになってきた。ジャンプ力は低くなったけど、笑いの取り方は姑息に上手くなっていく」とにやり。一方で新感線がやりたいことは39年間変わっていないと言う。

「普通の劇団は〝やりたいこと〟が達成されると解散になるんですけど、うちの劇団はそれが一度も達成されていない幸せなカンパニー。だから今まで続けられているんだろうと。全員が満足していたら、そこの集団でいる意味がない」

 “やりたいこと”とは?

 「オイラは稽古場でギャーギャー笑って創ったものを、お客さんにも喜んでもらえる集団でありたい。でも全てがうまくいった公演なんてない。だから努力するし、多分失敗もある」
いのうえさんは「一番やりたいのは、すごく笑えて、終った後にメインテーマを口ずさんで帰れるようなもの。後に何も残らないようなものにしたい。それが理想なんですけどね、とりあえず目の前のものを日々こなしていく感じです。満足したら終わるような気がしますね」。

 技を磨きつつも、変わらず挑戦者然としている彼ら。まだまだこれからだ。彼らも、私たちも。

山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki

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