映画『さらば愛しきアウトロー』
■監督・脚本:デヴィッド・ロウリー
■出演:ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、ダニー・グローヴァー 他
■配給:ロングライド
◎KBCシネマにて公開中
ハリウッドの名優ロバート・レッドフォードが、昨年の8月、俳優引退を表明。多くのファンが、驚き、悲嘆にくれました。私の世代は、何といっても彼の出世作『明日に向って撃て!』が、すぐに思い出されます。また、大ヒットした『スティング』、『大統領の陰謀』は大好きな作品。さらには、監督・製作総指揮をし、彼の再来と云われるブラッド・ピットを起用した『リバー・ランズ・スルー・イット』。関わった作品を上げろと言われたら枚挙に暇がないのでこの辺りで止めておきますが、兎にも角にも本当に引退されるのでしょうか。
今月ご紹介する映画は、俳優として最後の作品『さらば愛しきアウトロー』です。ロバート・レッドフォードは1936年8月生まれ、今年83歳になります。スクリーン上の彼は年相応と思われるシーンもありますが、全体から醸し出される品性、清潔感は健在です。
今回の役は、銀行強盗犯のフォレスト・タッカーという実在の人物。ストーリーも、ほぼ事実に基づいて展開されています。16回の脱獄と銀行強盗を繰り返しても、誰一人傷つけなかった男。私は、その役を何故最後の作品に選んだのか、疑問に思いながら観ていました。ストーリーが進むにつれて、少しわかったことがあります。例え警察に追われようとも、窮地に立たされようとも、微笑みを浮かべているフォレスト。その余裕の姿に、引退を覚悟した俳優ロバート・レッドフォードを見た気がしました。
老いは誰にでもやって来る、それは私も実感しています。今という生活に何時かピリオドを打たなければならない、そのような時にあっても微笑んでいられる人の姿は、実に爽やかで、老いることを楽しんでいるかのようです。
舞台は1980年代のアメリカ。冒頭から、銀行強盗のシーン。フォレストはブルーのスーツに小粋なソフト帽をかぶり、紳士然とした出で立ちで銀行に入ります。「ご用件は」との問いに、ジャケットの内側に入っている銃を見せれば強盗成立。現場には刑事のジョン・ハント(ケイシー・アフレック)が居たにも拘らず、犯罪は行われてしまいました。刑事として一心に追うジョンが、いつしか抱くフォレストへの羨望にも注目したいところ。そんな刑事とのからみ、気になる女性ジュエル(シシー・スペイセク)との恋の行方が軽妙なタッチで描かれています。
劇中、フォレストは「お前ならもっと楽に生きられるんじゃないか?」と尋ねられ、こう答えます。「楽に生きるなんて、どうでもいい。楽しく生きたい」と。そのシーンを観て、うなずいている私がいました。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。