世界に誇る慈悲の微笑みの伝播をたどる聖徳太子の往生した色鮮やかな浄土
時空を超えたほほ笑みです。コロナ禍の心を癒してくれるに違いありません。
特別展のポスターで目を引く仏像が、奈良・中宮寺の国宝『菩薩半跏思惟像(ぼさつはんかしゆいぞう)(伝如意輪観音)』です。クスノキを使った独特の寄木造で、飛鳥時代7世紀に作られました。当時は、頭に冠、胸飾りに腹当てをつけ、腕輪をした、色鮮やかな姿だったと考えられています。今回の展示では、様々なアングルで表情を鑑賞できます。
右手をほほにあてて思索する姿を「思惟」といいます。もともとは出家前のお釈迦様が、人生について深く思いを巡らせる姿を表現したもので、仏像が生まれた地、パキスタン・ガンダーラの石造『樹下思惟(じゅかしゆい)』に、そのルーツをたどることができます。
唇の両端がやや上がった神秘的なアルカイックスマイルは、5~6世紀の中国・南北朝時代の仏像に見られる形です。この姿が、中国から朝鮮半島を経て日本にたどり着きました。悠久の時の流れを感じます。
現在の中宮寺は、法隆寺の夢殿に隣り合った場所にありますが、江戸時代の直前頃までは400メートルほど東に建っていました。発掘調査で塔や金堂跡が確認され、史跡公園として整備されています。
その中宮寺のもう一つの国宝『天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)』は、日本最古の刺繍です。残っているのは凡そ90センチ四方の断片だけですが、当初は縦が2メートルほど、横は7メートル前後もある2枚の大きなカーテンだったとみられます。聖徳太子が往生した浄土の世界「天寿国」を色鮮やかな糸で縫い上げたものです。
九州国立博物館での特別展はほぼ1年ぶり。オンラインで事前予約の上、飛鳥時代の美の世界をご堪能ください。
《樹下思惟》パキスタン・ガンダーラ クシャーン朝 2〜3世紀
京都・龍谷大学 龍谷ミュージアム
国宝《天寿国繍帳》 飛鳥時代 7世紀 奈良・中宮寺
画像提供:奈良国立博物館 撮影:佐々木香輔
展示期間:1月26日(火)〜2月21日(日)
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)
福岡近郊博物館・美術館のスケジュール
※( )内の料金は、特別・前売り・団体料金、詳細はお問合せください
■九州国立博物館
奈良 中宮寺の国宝
1月26日(火)~3月21日(日)
●一般 1,800円
●高大生 1,200円
●小中生 800円
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)
■久留米市美術館
生誕130年記念 髙島野十郎展
《からすうり》1935年 福岡県立美術館
1月20日(水)~4月4日(日)
●一般 1,000円(800)円
●65歳以上 700円(500)円
●大学生 500円(300)円
●高校生以下無料
休館日/月曜
☎0942・39・1131
■北九州市立美術館本館
奇想の浮世絵師 歌川国芳 〜魅惑の演出スペクタル
上《朝比奈小人嶋遊》(部分)
弘化4-嘉永5年(1847-52)頃
下《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》
(部分) 嘉永4年(1851)
~2月28日(日)
●一般 1,200円
●高大生 800円
●小中生 600円
休館日/月曜(ただし月曜が祝日・
振替休日の場合は開館し、翌火曜
が休館)☎093・882・7777
■佐賀県立佐賀城本丸歴史館
よみがえれ! 佐賀城本丸御殿
「鬼瓦」 佐賀県蔵
1月22日(金)~3月7日(日)
●入場無料
会期中休館日なし
☎0952・41・7550
■大分県立美術館
大分県立美術館 開館5周年記念事業 びじゅチューン!×OPAM なりきり美術館
Ⓒ NHK・井上涼 2020
2月19日(金)~5月9日(日)
●一般 300円(250)円
●大学・高校生 200円(150)円
●中学生以下無料
休展日/3月22日(月)、
3月29日(月)、4月19日(月)
☎097・533・4500
●新型コロナウィルス感染拡大防止のため、休館・展覧会が中止・延期される場合があります。
お出かけ前に各施設のホームページなどを確認してください。