松尾波儔江 三十三回忌追善「泣いたらあかん」
公演期間/7月1日(土)~23日(日)
公演場所/博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
約2年半ぶりの博多座出演 ご恩をお芝居で返したい
松尾波儔江の著書「女役者」をもとに、劇団「大和なでしこ」の女座長・鹿子の波乱万丈の人生を描いた一代記の「松尾波儔江三十三回忌追善『泣いたらあかん』」。主役の鹿子を演じるのは約2年半ぶりの博多座出演となる藤山直美さんです。
名子役から一座を持つ名役者となり、のちに子供たちに歌舞伎を教える「松尾塾」を開いて歌舞伎文化の振興に尽力した松尾波儔江さんとは、昭和の上方喜劇界を代表する喜劇役者であった父・藤山寛美さんと共に交友があったそうです。
「波儔江さんは、とても華やかな方でしたよ。波儔江さんと波儔江さんのご主人で大阪・新歌舞伎座の創始者でもある國三さんにはとてもお世話になりました。初めて父娘共演させてもらったのもお二人のおかげなんです」
そんなたくさんの恩を、舞台で返したいという強い思いがあるといいます。今回、松尾波儔江さんの人生をモデルにした脚本を読んで、どんな部分に共感したのでしょうか。
「人生いろいろなことがある。波儔江さんも悲しいことや悔しいこと、嫌なことがたくさんあっただろうに、どんな時も舞台に出ないといけない。つらかったろうと思います」
そうやって舞台を務めてきた役者の思いは劇場に残っていると言います。
「だから自分も生半可な気持ちでは罰が当たると思っています。昔から役者のみなさんがどんな思いで舞台に立っていたのかを考えると、いい加減な気持ちではあきません」
激動の時代を生きた 女座長の一代記
大正から昭和はじめにかけての激動の時代を描いたこの舞台。特に見ていただきたいところはどこでしょう。
「やっぱり“戦争の悲惨さ”ですね。戦争ってしたらダメです。こんなにみんなの人生が狂うというのを見てもらいたい」
時代の渦に巻き込まれながらも、人の営みも人情もあります。壮絶な人生劇とはいえ、藤山さんが演じると笑いも欠かせません。
「人はずっと泣いていられないし悩んでいられないから、どこかで苦しみの出口となる一片を切ろうとする。それを切ったときにサーッと空気が抜けていく。それが笑いなのでしょうね」
主人公・鹿子が人生の岐路で演じる劇中劇で、藤山さんが男役・女役を演じ分ける「梅川忠兵衛」、「瞼の母」、「安来節」などの名演目にさらに期待が高まります。
「博多には、昔から旅を回るお芝居を応援する土壌がある。この『泣いたらあかん』も旅一座を率いる女座長の一代記。きっと親しみを持って見ていただけると思います」
涙あり、笑いありの人情喜劇。この舞台の熱量を肌で感じてみてはいかがでしょうか。