福岡市博物館ライデン国立古代博物館所蔵古代エジプト展

古代のミイラを最先端ＣＴ画像で解明エジプト文明を多面的に紹介

　ミイラが蘇りました！こう書きだすと驚きますよね。実はこの展覧会、２年前に九州国立博物館で開催するはずでしたが、新型コロナのパンデミックで中止になり、今回福岡市博物館で“蘇った”というわけです。

　一番のポイントは、亜麻布に覆われたミイラの姿を、最先端のＣＴスキャン技術を利用した３Ｄ画像で観覧できる点です。左の写真『タディスもしくはタ（ネト）カルウのミイラ』がそのイメージです。

　これを可能にしたのは、１８１８年に設立されたライデン国立古代博物館の初代館長ルーヴェンスの先見の明でした。布の中の姿を見てみたい。誰しもがそう考えますが、ミイラはいったん布をほどくと元に戻せません。ルーヴェンス館長は、科学技術の進歩に希望を託して、布に覆われたままでの保存を決意しました。Ｘ線が発見されたのは、博物館設立から半世紀以上も後のこと。古代の謎の解明は、コンピュータ処理した立体的な透視画像によって飛躍的に進みました。

　もう一つは、ミイラを納めた木棺を立てて展示している点です。会場を訪れた人は、棺に施されたカラフルな装飾を、自分の目線で鑑賞できます。写真の『アメンヘテプの内棺』は、様々な図柄が色彩豊かに描かれています。神々の図柄とともに、赤は魔除けというように、色にも力があると信じられていました。大木の少ないエジプトでは、棺に使う木材も貴重でした。

　観覧のお勧めが音声ガイドです。音声だけでなく、カラーの液晶画面にも一部ですが解説が表示されます。画面でクイズも楽しめるという優れものです。

　ミイラで葬られたのは、王族など高貴な人だけでなく、蛇やワニ、猫や魚など様々な生き物もあります。生と死、自然や社会をどう考えるか。古代エジプトは３０００年を越える王朝の歴史の中で、時代に応じて変遷してきました。人間にとって悠久のテーマです。