「脳卒中」は脳血管に起こる病気の総称です。代表的なものに脳の血管が詰まる「脳梗塞」があり、ほかにも脳血管が破れる脳出血、速やかに受診、入院しないと命にかかわるくも膜下出血の3つがあります。発症時の自覚症状も原因もそれぞれ全く違う病気です。しかし、共通するのは、発症した際の救急対応です。
つまりイラストに書かれた「脳卒中予防十か条」の最後にある「⑩脳卒中 起きたらすぐに 病院へ」が大切なのです。この十か条は、公益社団法人「日本脳卒中協会」が作成し最終的に強調していることでも分かりますが、速やかに対応できる病院に行くことです。
脳は身体のあらゆる機能を司っている器官です。ご承知かとは思いますが、脳に血液が流れなくなることで細胞の一部が破壊されると身体機能の麻痺など後遺症が生じます。身体機能の麻痺だけ出なく、生命維持に関わる細胞がダメージを受けると命に関わるのです。
1995年に開発され、今では脳梗塞になった多くの患者さんに使われているtPAという強力な薬があります。脳血管にできた血栓を溶かすことで血流を再開し脳梗塞による脳細胞の損傷を防ぐ効果があります。ただ、この薬も発症後4時間半以内に使わなければ効きません。脳卒中には「Timeismoney(時は金なり)」にかけて「Timeisbrain!(時は脳を助ける)」という言葉があるほどです。
私どもの福岡市民病院でも救急疾患を受け入れる体制が整っています。各診療科、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師が総掛かりで脳卒中の患者さんの治療に当たりますが、厳しい時間との闘いを続けているのです。
もちろん、シニアの皆さんは発症リスクが高く予防が何より大事です。メタボに気をつけ、喫煙はやめなければなりません。定期的に人間ドッグ、特に「脳ドッグ」は大切です。脳卒中予防のためにあらためて「脳卒中予防十か条」を見直しましょう。
担当医
福岡市民病院
診療統括部長 脳神経外科
平川 勝之(ひらかわかつゆき)先生
協力:福岡市医師会