甘くて、ホクホク。いよいよサツマイモの季節がやってきます。
今月号の特集は、サツマイモの栄養やおいしく食べるコツなど、実はすごい「サツマイモの話」です。
準完全栄養食品のサツマイモが持つ力
「サツマイモの栄養」と聞くと、食物繊維が思い浮かびます。ですが、サツマイモには他にもさまざまな栄養素があり、たんぱく質と脂肪を他の食品で補給すれば理想的な食事となる、という意味で「準完全栄養食品」とされています。
特に豊富に含まれているのは、でんぷん、ビタミンC、カリウム、そして冒頭に挙げた食物繊維です。
でんぷんはブドウ糖に変化して、体を動かすためのエネルギーとなります。サツマイモは豊富なでんぷんに対して、脂質はとても少ないため、ヘルシーにエネルギーを補給することができます。体脂肪が気になる人や、代謝が落ちてきた中高年におすすめしたい食材の1つです。
サツマイモに含まれるビタミンCは、リンゴの約7倍。ビタミンCには、皮膚や粘膜を健やかに保つ作用や、抗酸化作用もあります。抗酸化作用とは、体内に蓄積された活性酸素を消去する力。活性酸素は老化を促す他、がんや生活習慣病など、さまざまな病気の発症に影響があると言われています。年齢とともに体が持つ抗酸化の働きは低下するので、抗酸化作用のあるサツマイモを積極的に摂取してはいかがでしょうか。
また、カリウムには腎臓からナトリウム(塩)を排出させる作用があります。血圧が高い人など食事の塩分量が気になる人にとって、心強い食材と言えます。
おいしく食べるコツ
保管の仕方や調理の仕方でおいしさは変わります。
おいしさ引き出すコツを紹介します。
■収穫後は寝かせる
収穫してすぐのサツマイモは、水分が多いため甘みが感じにくくなっています。2、3カ月貯蔵すると水分もほどよく抜け、さらにでんぷんが麦芽糖に変化し、甘みが強まり、ネットリとした食感に。店頭に並んでいるサツマイモの中には、「甘太くん」など甘みを出すために長期間貯蔵した後、出荷するブランドサツマイモもあります。
家庭菜園などで収穫したサツマイモも、しばらく貯蔵することで甘さが強くなります。
■常温で保存
購入したサツマイモを冷蔵庫で保存するのはNG。サツマイモは本来、熱帯地方の作物のため冷蔵庫で保存すると中が変色したり、固くなってしまうなど低温障害を起こしてしまいます。13~16度がサツマイモの保管には最適。冷暗所で常温保存しましょう。
■ゆっくり加熱
サツマイモが甘くなるのは、調理の際に熱を加えることで酵素が働き、でんぷんが麦芽糖に変化しているから。65~75度で酵素が働き、それ以上の温度になると酵素の働きが失われます。火をつける前に鍋にサツマイモを入れたり、オーブンの場合は低めの温度設定で、ゆっくり加熱して65~75度の適温を長く保ちましょう。そうすることで麦芽糖の量が増え、甘さが増します。石焼き芋が甘いのも、遠赤外線でゆっくりと温めて適温を保っているからです。
健康に役立てるコツ
食べ方によって受ける健康効果には違いがあります。
より健康にプラスとなる食べ方とは。
■皮ごと
皮に近い部分には、ヤラピンという成分が多く含まれます。この成分には、お通じをよくする緩化作用があり、食物繊維と合わせて便秘解消に効果があると言われています。
また、サツマイモの皮が赤紫色なのは、アントシアニンという色素成分の色。アントシアニンは、抗酸化作用を持つポリフェノールの一種。皮ごと食べることで、抗酸化作用もさらに高まります。
■蒸す、焼く、煮汁ごと
サツマイモに含まれるビタミンCやカリウムは水溶性の栄養素で、水に溶け出してしまう性質があります。このため、ゆで汁を捨てると、せっかくの栄養素も捨てることに…。
栄養素を余すことなく摂取するために、調理法は蒸す、焼く、もしくは煮汁ごと食べられる料理がおすすめです。
■冷ましてから
サツマイモのでんぷんは、加熱調理後に冷やすとレジスタントスターチという成分に変化。レジスタントスターチは胃や小腸では消化されずに、大腸まで届きます。大腸に届いたレジスタントスターチは、腸内の善玉菌の餌となり腸内環境の改善や血糖値上昇抑制効果が期待されます。
目指せ、完全栄養食!サツマイモレシピ
サツマイモ+αでさらに健康的に!
不足しているたんぱく質と脂質を補って完全栄養食を目指しましょう!
■3つのレシピ共通の下準備
あらかじめ加熱済みのサツマイモをストックしておくことで、調理の際の時短になります。
①サツマイモをよく洗い、端を切り落とす。皮つきのまま長さを半分に切り、1cm幅のいちょう切りもしくはスティック状に切る。
②耐熱容器にサツマイモと水(サツマイモ1本に対して大さじ1杯程度)を入れ、ラップをして電子レンジで加熱(600Wで約3分30秒)。
③水気を切り、タッパーに移して、冷蔵庫で保存。(保存期間目安:2日)。
■【+豚肉】サツマイモとパプリカの 豚肉巻き
豚肉でたんぱく質と脂質をプラス。
豚肉に含まれるビタミンB₁は、糖質を燃やしてエネルギーに変えるときに必要な栄養素。ビタミンB₁は疲労回復に効果があるので、夏の疲れが残っている人におすすめ。また、サツマイモのホクホク感とパプリカの柔らかさ。食感の違いも楽しめます。
【材料】(2人分)
下準備したサツマイモ(スティック状)…1本分(200g)、
豚バラ肉の薄切り…200g、パプリカ…1/2個(70g)、
塩こしょう…少々、薄力粉…大さじ1、サラダ油…適量
合わせ調味料Ⓐ
┣しょうゆ…大さじ1、料理酒…大さじ1、みりん…大さじ1、
┗砂糖…大さじ1/2
【作り方】
①パプリカを細切りにする。
②豚肉に塩こしょうをふり、下処理したサツマイモと①をのせて巻く。
③焼く直前に小麦粉をまぶし、軽くはたき落とす。
④中火で熱したフライパンにサラダ油を引き、肉の巻き終わりを下にして、焼く。
⑤全面を焼き、肉の色が変わったら合わせ調味料Ⓐを加える。
⑥調味料を煮立たせ、絡めながら焼き、汁気が少なくなったら火からおろす。
■【+ヨーグルト】サツマイモとリンゴのヨーグルト和え
ヨーグルトでたんぱく質と脂質をプラス。
冷えたサツマイモを使うことで、レジスタントスターチを摂取することができます。ヨーグルトに含まれる乳酸菌、そして菌の餌となるレジスタントスターチと食物繊維の効果で腸内環境の改善に役立ちます。
【材料】(3~4人分)
下準備したサツマイモ(いちょう切り)…1/2本(100g)、
リンゴ…1/2個(150g)、はちみつ…大さじ1、ヨーグルト…100g
※好みでレーズンを加えたり、シナモンをかけたりしてもおいしい
【作り方】
①リンゴをよく洗い、皮つきのまま、いちょう切りにする。
②ヨーグルトとはちみつを混ぜ合わせる。
③②に①と下処理したサツマイモを加え、よく和える。
■【+豆腐】サツマイモの白和え
豆腐でたんぱく質と脂質をプラス。
豆腐から大豆由来のイソフラボンも摂取することができます。イソフラボンには、女性ホルモンの減少によって引き起こされる更年期障害の症状の改善や、骨粗しょう症を予防する効果があります。
【材料】(2~3人分)
下準備したサツマイモ(いちょう切り)…1/4本(50g)、
春菊…30g、木綿豆腐…1/3丁(約100g)、
白だし…大さじ1/2、砂糖…大さじ1/2、
粗びき黒こしょう…好みの量
【作り方】
①春菊を3cm幅に切り、ラップをかけて電子レンジで加熱(600Wで1分)。
②木綿豆腐をキッチンペーパーで包み、耐熱容器に入れる。電子レンジで加熱(600Wで2分程度)し、水切り後、粗熱をとる。
③ボウルに、②、白だし、砂糖を入れ、よく混ぜ合わせる。
④③に①と下処理したサツマイモを加えて、全体がなじむまでよく和える。
⑤器に盛り、好みで粗びき黒こしょうをかける。
取材・監修
中村学園大学
栄養科学部栄養科学科
沖 智之教授
1999年九州大学大学院農学研究科博士課程修了、博士(農学)を取得。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターで、主に紫サツマイモや黒大豆の成分分析や機能性評価に従事。2018年4月より現職。