4人の男女と、車と煙草。そして村上春樹
Ⓒ2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
『ドライブ・マイ・カー』PG-12
監督/濱口竜介
出演/西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか 他
配給/ビターズ・エンド
◎8月20日(金)より中洲大洋、KBCシネマ 他、全国にて公開
登場人物たちの会話に、劇中劇のせりふ。言葉を生業としている私は次々に繰り出される言葉に聴き惚れ、一言一句逃すまいとスクリーンと格闘している気にすらなりました。
村上春樹の同名小説が原作の『ドライブ・マイ・カー』に登場するのは、俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)、その妻・家福音(霧島れいか)、ドライバー・渡利みさき(三浦透子)、俳優・高槻耕史(岡田将生)。
妻との生活に満足していた家福。ある日、彼は妻の秘密を知りますが気付かないふりをし、平静を装いながら日常を過ごします。最愛の人の秘密をなぜ聞けない、聞こうとしないのか。プライドなのか、臆病なのか…。音は秘密を抱えたまま、突然この世を去ります。
2年後、家福は仕事で赴いた広島で、かつて妻から紹介された高槻と再会。雇われドライバーのみさきとも出会います。家福とみさきは車中で共に過ごすうち、互いへの理解を深めていきます。家福は、みさきの過去と触れることである結論に辿り着きます。
登場人物だけでなく、常に存在感を放っているのは、家福夫妻が長年乗っているスウェーデン車のサーブ・900。如何にも北欧の車らしい風格と頑固さが、家福の人間性と一致しているようです。車中で家福とみさきが煙草を燻らせるシーン、紡ぎ出される言葉たち。どれをとっても村上春樹の香りが漂います。
本作はカンヌ映画祭で脚本賞受賞、大人を魅了する作品です。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。