現実と小説の世界を交錯しながら進む物語
Ⓒ2021「鳩の撃退法」製作委員会 Ⓒ佐藤正午/小学館
映画『鳩の撃退法』
監督/タカハタ秀太
出演/藤原竜也、土屋太鳳、風間俊介、西野七瀬、豊川悦司 他
配給/松竹
◎8月27日(金)T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、
ユナイテッド・シネマ福岡ももち 他にて公開
観る人を「謎」の渦に巻き込んでいく。そんな感覚にさせる映画、『鳩の撃退法』が公開されます。
主人公は、過去に直木賞を受賞したこともある小説家の津田。彼はとあるバーで、編集者の鳥飼に執筆中の小説を読ませます。そこに描かれていたのは、津田が以前暮らしていた富山で経験したことを元にしたミステリー。失踪した一家、偽札、裏社会のドン。読むほどに、鳥飼は小説の中だけの話ではないように感じて…。
主役の津田を演じたのは、藤原竜也さん。いくつもの謎が飛び交う中、物語は現実と小説の世界が複雑に交錯しながら進行していきます。演じるのは難しかったのでは?
「僕らも戸惑うこともあって、撮影現場ではスタッフ、共演者と、このシーンが現実のことなのか、小説のことなのか確認しながらやらせてもらいました。交錯はしていますが、そこは監督がリーダーとして、頭の中で整理されながら演出していたんだなと、今振り返って思います。最初の方のシーンで津田と失踪した幸地という人物が出会い、ピーターパンの話をして、拍手をするシーンがあります。これはどこに着地点を持っていくんだろう、どう盛り上がってくるのだろうって思っていましたが、それがつながった瞬間は圧巻でしたね」
パズルが1ピースずつはまっていくように、前半の伏線が回収されていく後半。スリルを味わいながらも、どこかで感じる心地よさ。
「これはノンストップの謎解きですけどね、僕はピーターパンの寓話(ぐうわ)の世界に引き込まれていくようなファンタジーのようなことも感じます。きつい描写もありますけども、非常にどこか心温まるような色、空気も感じて、観終わった後は穏やかな感じになったりしました。だからすごく面白かったですね」
観客を劇中に巻き込む「親しみやすい」主人公
主人公・津田の人間味あふれるキャラクターも本作の魅力の一つ。直木賞受賞作家であるものの、新作を発表せずくすぶっている津田は、どこか抜けているような印象も。藤原さんにとって津田とはどんな人物なのでしょうか。
「僕としては非常に親しみやすいキャラクターでしたね。『売れたい』という思いもあるけれど、現状にも若干満足している。これは欠点というか、今の若者たちにも通じるところがあるわけじゃないですか。だから僕としては、演じるのが楽しかったですね。それにタカハタ監督からは要所要所で要望はありましたが、あとは自由に泳がせてもらいました。僕もそれに応えるためにはどういう表現に持っていったらいいだろう、と考えながらでき、非常に充実した楽しい日々でしたね」
演技派と名高い藤原さんが、親しみやすい人物として主役を演じるからこそ、観客も事件に巻き込まれていく本作。果たしてどんなラストを迎えるのか、当事者感覚で楽しんでください。
山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki