「お母さん代表」のファンテーヌを演じて
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
公演期間/8月4日(水)~28日(土)
公演場所/博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
写真提供:東宝演劇部
今年もミュージカル『レ・ミゼラブル』が博多座で公演されます。話の舞台は19世紀フランス。パンを盗んだ罪で投獄されたジャン・バルジャンは、司教との出会いをきっかけに、新しい人生を生きることを決意します。8年後、名を変え、市長の地位を得たバルジャン。彼の経営する工場の工員の1人、ファンテーヌは娘のコゼットを人に預け仕送りを続けますが、とある事件で工場をクビに。身を売りながら養育費を稼ぐようになった彼女は病に倒れ、バルジャンにコゼットを託し…。
2005年から本作に参加し、コゼット、エポニーヌ、ファンテーヌの3役を演じてきた知念里奈さん。今回は、4度目となるファンテーヌ役を演じます。知念さんはファンテーヌについて「お母さん代表」と語ります。
「彼女がたどる悲劇が注目されがちですが、ここ数年は、彼女は本当に母親なんだな、と思うようになりました」
自身も2人の子供を育てる母親である知念さん。だからこそ、彼女の気持ちが痛いほど伝わると言います。
「彼女はコゼットと一緒にいたかったのに、自分で育てることができずに、働いてお金を送り続けています。想像するだけで、本当に辛いですよね。コゼットのために体も髪も売って、原作の小説では歯も売ってしまう。本当にかわいそうな人。ファンテーヌは舞台に登場したときからコゼットとは離れていますが、言動の一つ一つがコゼットにつながっていて、ほぼコゼットのことしか言っていないんですよね。演じていて、役を見失いそうになるときは、とにかくコゼットなんだ、ということを思い返すようにしています」
いいときも、悪いときも人生に寄り添う作品
ミュージカルへの注目が高まる中でも、『レ・ミゼラブル』は、ほぼ隔年ごとに上演される人気作。上演の度に、足を運ぶ熱心なファンが多いことでも知られています。本作の人をひきつけてやまない魅力とは?
「まず音楽が素晴らしいこと。そして、過ちを犯したバルジャンが悔い改めて、ファンテーヌやコゼットに出会って人生をやり直していくというテーマが、たくさんの人の心を打つのかなと思います。それに、いろいろなキャラクターがいて、その時々で誰の目線で物語を見るのかが変わります。私自身、16年間演じさせてもらっている間に人生のいいときも悪いときもありました。その度にレミゼのキャラクターたちが寄り添って、人生のそばにいてくれていた気がします。きっとお客様の中にもそんな方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか」
年齢・性別関係なく演じられるなら、どの役を? と尋ねると「ジャン・バルジャン」と答える知念さん。
「すごく人間らしくて、好きです。パンを盗んでしまったり、救いの手を差し伸べた司教様のことも一度は裏切ってしまう。でも、悔い改めてやり直すと決めたときからの正直さとか、愛の深いところとか…。人って生きていると失敗したり、間違えたりすることって多かれ少なかれあります。そんなときにちゃんと悔いて、やり直せるジャン・バルジャンみたいな人間になりたいなと思います」
多くの人の心に、人生に寄り添う作品。この夏、出会いに行きませんか。
山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki