映画『ロケットマン』〈PG12〉
■製作総指揮:エルトン・ジョン
■監督:デクスター・フレッチャー
■出演:タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード 他
■配給:東和ピクチャーズ
◎8月23日(金)よりT・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、
ユナイテッド・シネマ福岡ももち、中洲大洋 他にて公開
私が子供の頃、クリスマスに父がプレゼントしてくれたのは、蓄音器。針を取り換えたり、横のレバーを廻して起動させたりしながら音楽に親しんでいました。
そんな子供時代を過ごした私にとって、放送局は憧れの場所。アナウンサー時代も、幸いな事に、仕事として音楽に携わる事が出来ました。レコード室はまさに宝石箱。ちょっとカビ臭い匂いがたまりませんでした。
1980年代は、ラジオのディレクターとして洋楽のチャート番組を担当。私より1歳年上のエルトン・ジョンの音楽に正面から触れられる事になりました。その彼の半生を描いた映画が上映されます。期待に胸を膨らませて本作を鑑賞。エルトン・ジョンの名曲の数々がスクリーンから、高音質で流れてきます。
製作総指揮は、ご本人。幼少期から親へ不信・不満を抱いていた彼は、ミュージシャンとしてスタートし、音楽の頂点を極めます。その後、アルコール依存・薬物依存からの更生と、波乱の半生が赤裸々に描かれています。当時の著名なミュージシャンの多くが辿った道と同じように、激動の連続。しかも、男性である彼が、男性しか愛せないという事実。その心の葛藤がひしひしと伝わってきて、エルトン・ジョンが、マイノリティの人たちへ送ったエールとも取れました。彼が苦しみの半生を送っていたのは、幼少期にも原因があるようです。それは父親、母親の愛情が希薄であった事。私がこの映画の中で一番印象に残っているのは、幼き彼が父親に向って、こう言うシーン。「パパ、ハグして」。母親にも「ママ、ハグして」。両親とも、応じません。特に父親は彼の要望を一切受け付けず、その時の落胆した彼の姿には、胸が張り裂けそうでした。自分を抱きしめてくれる人間を求めていたのでは、と思います。もしかしたら、同性である父親は、彼が男性しか愛せないと言う性を見抜き、それを認めることができなかったのかもしれません。
劇中、彼の名曲の数々が流れてきますが、一曲一曲このような意味があるんだよと、エルトン・ジョン本人から教えてもらった気がしました。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。