参考資料
・[遊び尽くし]日本茶を一服どうぞ/小川誠二/
株式会社 創森社
・お茶のなんでも小事典—飲み方、食べ方、
利用法の科学(ブルーバックス)/大坪檀(監修)、
O‐CHA学構想会 (編集)/講談社
ここ数年、日本だけでなく世界中で緑茶がブーム。
日本各地の中でも、九州・山口は有数の茶どころ。
所変われば、茶も変わる。
緑茶の魅力と共に、各県の茶の特徴を紹介します。
「チャ」の葉から生まれる3種類のお茶
お茶には、ウーロン茶や紅茶、そして緑茶などがあります。ですが、この3種類のお茶はどれも「チャ」の木の葉から作られているもの。違いは製造過程での発酵にあります。
葉をほぼ完全に発酵させた「発酵茶」が紅茶、途中まで発酵させた「半発酵茶」がウーロン茶、そしてまったく発酵させていない「不発酵茶」が緑茶です。
茶葉や製法の違いで個性豊かな緑茶に
馴染み深い緑茶ですが、「煎茶」「釜炒り茶」などの種類があり、違いが分からないという人も多いのでは?葉を発酵させないための加熱処理の方法で大きく2種類に分けられます。蒸して加熱する「蒸し製」と釜でいる「釜炒り製」で、日本の緑茶のほとんどは「蒸し製」にあたります。左記では、種類ごとの特徴を紹介。好みのお茶を探してみては。
茶の種類(A 蒸し製・B 釜炒り製)
■A 玉露
新芽が伸びる頃から茶摘みまでの3週間ほど直射日光を遮り、新芽のみを摘んだもの。緑が濃く、苦みを抑えた、まろやかな甘みのある高級茶。
■A 煎茶
最も一般的な緑茶。針のようによったものが上質とされ、うま味や香りが良くなります。「深蒸し茶」は、蒸す時間を長くすることで渋みを抑えたマイルドな味。
■A 抹茶
玉露のように日光を遮って栽培した茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥させて石臼で粉状にしたもの。茶道や菓子の材料などに使われます。
■A 番茶
夏・秋に摘んだ比較的大きく固めの葉が原料。喉ごしが良く、優しい味なので日常的に飲みやすい。
■A 蒸し製玉緑茶
煎茶の最後の工程である「仕上げもみ」をしていない、丸い形の茶葉。苦みが少ないさっぱりとした味わいが特徴。
■A ほうじ茶
煎茶や番茶を強火でいって、独特の香りを出したもの。さっぱりしているので、食後のお茶にもぴったり。地方によっては、ほうじ茶も番茶とも呼びます。
■B 釜炒り製玉緑茶
茶葉を蒸さずに鉄製の釜でいって仕上げたもので、独特な香り。爽やかな味わいで、ほんのりとした甘みがあります。主に九州地方で生産。
■A 玄米茶
煎茶や番茶にいった玄米を加え、香ばしい玄米の香りが風味豊か。茶葉と玄米の組み合わせによって多様な味と香りのものがあります。
九州・山口 お茶巡り
■山口県
ダム建設をきっかけに盛んに栽培
宇部市の小野茶は、小野湖に近い藤河内茶園で主に栽培されています。51年前のダム建設で付近の水田が湖に沈むことになり、米農家の人たちが茶の栽培を本格的に始めました。藤河内は冬の気温差が大きく、小野湖からの霧が立ち込め、茶の栽培に適しています。栽培されている「やぶきた」という品種は、独特な強い香りと、ほのかな渋みを含んだ甘みに富んだ味わいが特徴です。
味が濃く、黄色がかった山吹色の水色が特徴の小野茶。しっかりとした味わいが好きな人に好まれています
☆おすすめの飲み方 温
協力・監修:宇部市
■福岡県
あえて三番茶を摘まない、ぜいたくなおいしさ
全国茶品評会で過去7年連続、農林水産大臣賞を獲得している八女茶。おいしさの裏には、生産のこだわりがありました。通常は一番茶、二番茶、三番茶と3度にわたり茶の葉を摘みますが、八女茶の平坦部では二番茶までしか摘まない茶園がほとんど。三番茶を摘まないことで、翌年の一番茶の品質を良くするためです。甘くてコクがあり、うま味が強いお茶となります。
「八女茶」とは、八女市だけではなく福岡県で生産しているお茶の総称。八女市山間部で生産される玉露は高級玉露として知られています
☆おすすめの飲み方 冷
協力・監修:福岡県茶業振興推進協議会事務局
■佐賀県
一杯ごとに味の移ろい感じる「嬉野茶」
1440年、唐人が陶芸の技術と共に伝えたとされる、歴史深い嬉野のお茶。山々に囲まれた嬉野では、一番茶の育成時期に出る朝霧が新芽に水分を程よく与え育成を促し、寒暖差ある気候が豊かな香りとコクを持つお茶を育成。品種は丸みを帯びた玉緑茶。急須の中でゆっくり開きながらうま味を抽出していくため、湯飲みに注ぐたびに味の移り変わりを楽しむことができます。
嬉野には、嬉野茶を使ったジェラートやオリジナルスイーツなどもたくさん。また、お茶の抽出エキスを配合したスキンケアグッズも人気
☆おすすめの飲み方 温・冷・アレンジ
◎アレンジ
緑茶+ソーダの「グリーンティースカッシュ」や、蜂蜜+レモンの皮+レモン汁の「グリーンティーレモネード」がおすすめ
協力・監修:(一社)佐賀県観光連盟
■長崎県
暑い日に冷茶で味わいたい、「長崎玉緑茶」
東彼杵町や佐世保市世知原、五島市、波佐見町、松浦市、雲仙市瑞穂町、佐々町など県内各地でお茶の栽培を行っている長崎県。中でもブランド茶「長崎玉緑茶」は、近年各品評会などで受賞を重ね、全国の茶産地からも注目を集めています。茶葉の形が勾玉(まがたま)のような形状で、水色が明るく渋みが少ない、まろやかなうま味が特徴。冷茶にもおすすめのお茶です。
「長崎玉緑茶」は、平成29年度「全国お茶まつり長崎大会」で農林水産大臣賞を獲得。また、消費者が選ぶ「日本茶AWARD」でも蒸し製玉緑茶が「日本茶大賞」を3度受賞
☆おすすめの飲み方 温・冷
協力・監修:長崎県 農産園芸課
■大分県
低農薬・有機栽培にこだわる農園のお茶
大分県宇佐市の千財農園は、魚かすなどを使った低農薬、有機栽培にこだわる茶園。「特上新茶」「特上一番茶」のほか、強めに蒸した「新茶あさつゆ」は緑鮮やかな水色で、まろやかなコクと甘みがあり「天然玉露」と呼ばれるほど。大分は他にも同じく緑茶の佐伯、発酵番茶の中津、さらにハーブティーの杵築などバラエティー豊かなお茶の産地です。
千財農園は茶畑だけでなく、250本の藤や約2500本のバラなどもある人気の観光スポット。お茶は鮮度が命、と摘んですぐ加工するこだわり
☆おすすめの飲み方 温
協力・監修:大分県福岡事務所
■熊本県
環境モデル都市・水俣の人にも環境にも優しいお茶
うたせ船が浮かぶ不知火海を臨む水俣で栽培される「みなまた茶」。温暖な気候を生かし、4月中旬の七十七夜から茶摘みが始まります。海の爽やかさや山間地特有の瑞々しさを思わせる香りを兼ね備えた、甘み、苦み、渋みの調和がとれた味わい。また、環境モデル都市・水俣として、人にも環境にもやさしいお茶づくりをと有機栽培にも積極的に取り組んでいます。
うま味や甘味を感じられる品種や香りに特徴のある品種、今では希少な在来種など多彩な味・香りを楽しめます
☆おすすめの飲み方 温
協力・監修:熊本県福岡事務所
■宮崎県
温暖な気候で育てられる、希少な「釜炒り茶」
温暖な気候で、県内全域で茶の生産が行われる宮崎県。中でも日本の緑茶の1%以下と希少性の高い「釜炒り茶」の生産量は、日本一(2019年度種別生産実績)。宮崎の「釜炒り茶」は、中国・朝鮮半島を経て1600年ごろ伝来。香りや味、見た目、色において厳しい審査に合格したものは、「釜炒り茶」の王様「釜王」として「みやざきブランド」に認証されています。
爽快な味わいの「釜炒り茶」。新茶シーズンを迎える初夏からは、水出しで飲むのがおすすめ。また、近年は宮崎県オリジナルの「新香味茶」など新しいお茶の開発も
☆おすすめの飲み方 冷
協力・監修:宮崎県 福岡事務所
■鹿児島県
茶の産出額日本一。多彩な茶が勢ぞろい
鹿児島県は、2019年度産茶の産出額(農林水産省発表)が静岡を抜いて全国一に。寒暖差が厳しい山麓地域では香り高い茶、平地の豊かな日差しの中で育つはっきりとした味の茶など、南北に長い県の特徴を生かしてさまざまな色・香り・味の茶が生産されています。特に鮮明で濃い緑のうま味に富む「知覧茶」、トロリとした感触を味わえる新芽の「しぶし茶」などが人気です。
左:鹿児島県の有機栽培面積は全国トップクラスで抹茶の生産が拡大中です
右:芋焼酎を粉末茶で割る、志布志市オススメの「茶酎」
☆おすすめの飲み方 温・冷・アレンジ
◎アレンジ:茶酎水割り
①好みの量の粉末茶をグラスに入れる
②少量の水を入れ、粉末茶をよく溶かす
③氷をグラスいっぱい入れる
④焼酎を好みの量注ぐ
⑤水を注ぎ、混ぜたら完成
他にも水の代わりに炭酸水を入れた茶酎ハイや、お湯割りの茶酎も!
協力・監修:鹿児島県福岡事務所