映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」
■原作・監督:山田洋次
■出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子ほか
■配給:松竹株式会社
◎12月27日より、福岡中洲大洋、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、イオンシネマ大野城、TOHOシネマズ福津、T・ジョイ久留米ほかにて公開
渥美清さんは1928年東京都台東区生まれ、お元気であれば91歳。1996年8月68歳で亡くなりました。亡くなった後の49作目で誰もが最後と思いきや、この度50作目が誕生しました。
閉塞感漂う現代にあって、山田監督の言葉に、「寅さんの台詞にあるように『生まれてきて良かったと思う事がそのうちあるさ』と切実に願って第50作を製作することを決意した」とあります。
1作目が公開されたのは1969年8月、私はまだ学生。映画鑑賞は好きでしたが、恥ずかしながら『男はつらいよ』には興味ありませんでした。主役の男性が水も滴る好い男でもないし、なんて思ったり。その後、就職し仕事にも慣れ、責任も出て来た頃に友人に誘われ、仕方なく行ったのが、第25作目「男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花」。マドンナは浅丘ルリ子さんです。はまりました。面白い、次作が楽しみ。以降大ファンになりました。
渥美さんのあの語り口のうまさ。アナウンサーという仕事柄、ついつい滑舌、声色が気になるのですが、渥美さんは絶品。男は顔じゃないよ、語り口だよ、と言いたくなります。
そして今回の作品。上映を心待ちにしていました。50年の集大成でどんな作品なんだろうと。
ドキドキしながらオープニングを待ち、いよいよ山田魔術が始まります。
今回の主役は何といっても満男(吉岡秀隆)です。サラリーマンを辞めて、小説家になり、中学生の娘と二人で生活しています。奥さんは既に他界し、今年は七回忌。その法要で葛飾の実家に戻ります。昔のままの住居には、母・さくら(倍賞千恵子)、父・博(前田吟)が住んでいます。家族が集まると、どうしても話題は「寅さん」に。在りし日の寅さんが、そこここに現れます。
過去49本の作品から選ぶカットは膨大だったと思います。25作目からしか観ていない私が言える筈はありませんが、本当に懐かしいカットが沢山映しだされます。
怒った時の寅さんの表情、何かあるとすぐ出ていこうとする所作、女性達との出会い、別れ、喜び、悲しみ。懐かしいです。
共演者の皆様も素敵。満男の忘れられない初恋の相手役・後藤久美子さんが、久しぶりに登場。満男と再会します。若い時の彼女のシーンも貴重です。浅丘ルリ子、夏木マリ、橋爪功、美保純、勿論、佐藤蛾次郎他、枚挙に暇がありません。これからの時代、この様な継続性のある作品は生まれるのでしょうか。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。