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長谷川法世のはかた宣言117・花火の法要(三)

長谷川法世のはかた宣言117・花火の法要(三)


 明治24年、小田原・横浜の裁判で知名度も※1 あがって、東京へ進出した川上一座。浅草中村座公演は連日の大入り。博多からの両親もそのまま東京に住まわせたとみえ、父専蔵さんが翌年他界したときは、「今戸の自宅にて死去」(中央新聞7/10)と報じられている。火葬は日暮里、葬儀は高輪泉岳寺で執り行われた。

 さて、1年後明治26年、博多での専蔵さんの法要だ。与一さんの記憶※2 では、「数十人の喪服行列で、みんな浅黄の着物の上に、白の裃、白緒の藤倉ぞうり、鳥追い笠をかむって…対馬小路から万行寺まで」ということになっている。

 江頭本※3 では、「六月十二日午後一時、音二郎を乗せた汽車が私営九州鉄道箱崎駅に着く。パン、パーンと打ち上げ花火が鳴る。三百五十人が出迎えた…一行三十余人は人力車を連ね、亡父・専蔵の一周忌墓参に法性寺(ほっしょうじ)※4(当時博多蓮池)に向かう。音二郎は紋付、はかま、あと全員は数珠を手に裁判官のような黒い法服姿…」、と書かれている。これは箱崎駅を出発して石堂橋から博多入りしたときのようすだ。

 つぎの都新聞は、人数にちがいはあるが江頭本の行列とおなじだろう。「川上座員四十余名は一同喪服の揃衣(そろい)(弁護士の服に似て萌黄の唐草模様あり)…」(6/16付)

 法要で花火を打ち上げたことは3月号にかいたが、同じ記事に「西洋及び日本古楽の音楽あり」(都新6/18)とあるのは、江頭本と井上本※5 によれば、前年創設された「博多音楽隊※6」だ。 

 井上本には、他資料にない一座のようすがかかれている。

 「…奇妙な法要に博多のものはおどろいたが、これだけではない。役者の町まわりはいつも華やかなものだが、今度の帰郷は亡父の法要が目的だからと、音二郎自身はもちろん座員一同も喪服に数珠を手に持ち、車にゆられ静々と町をまわり、博多のもののどぎもを抜いた」

 役者の町まわりとは、興行のあいさつや宣伝で町をまわること。いまの博多座の船乗り込みや節分でのお練りがこれにあたる。与一さんの記憶はこの町まわりの行列で、実は、3月号の引用で略していた部分に、「たしか興行は博多金屋小路の開明舎※7」だった、というのがある。井上本・江頭本や新聞記事では、開明舎ではなく、教楽舎※8 になっている。

 そういうことより、法要で帰ったのに、興行をやってしまうなんて。やっぱり音さんは変てこりんだな。

※1 裁判で知名度も…宣告のある4月20日は、4~5里先から提灯を灯して前夜の2~3時頃から出かけてくる。裁判所の門前に菓子店・寿司屋がでる。傍聴券がセリ売りになって1枚1円にもなり、川上の有罪無罪を賭ける者も。無罪の判決には傍聴席でどっと喝采。翌日検事の控訴で川上は横浜へ…。…5月5日無罪。一座分車にて22丁、旗持ち3名(紫の地に自由万歳祝無罪の白文)という旗を立て、警察署も通り(この時盛んにラッパなり)監獄へ行き、川上万歳を祝し拘禁中(23日間)の青柳捨三郎へ音の無罪を伝える。(柳栄二郎『新派の六十年』河出書房S23年刊より)。
※2 与一さんの記憶…原田種雄『人形と共に六十年―小島与一伝』S37年刊。
※3 江頭本…江頭光『博多川上音二郎』西日本新聞社H8年刊。
※4 法性寺…修昌山。正長元年日親上人が市小路に創立、日蓮宗西国最初の霊場。太閤町割りで蓮池に移転。M43年市電開通(現明治通り)により現在の千代町に移転。
※5 井上本…井上精三『川上音二郎の生涯』葦書房S60年刊。
※6 博多音楽隊…M25年博多初の素人西洋音楽隊。佐世保海軍音楽隊(M23年編成)の影響で各地に音楽隊結成が流行。博多でも実業家連の出資金500円で博多音楽隊結成。井上本より。
※7 開明舎…M10年ごろ開場。現在の隻流館の場所にあった。30年ごろ閉鎖したらしい。
※8 教楽舎…開場M16年。音さんは、37年ハムレット・浮かれ胡弓、40年祖国・新オセロ・鶴亀など公演。40年・12月閉場、解体して東公園へ移転、博多座として開場。杮落しは川上一座。(開明舎とも井上本より)


長谷川法世=絵・文
illustration/text:Hohsei Hasegawa

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