ビューと吹く風に思わず体をこわばらせる、この季節は、お家でゆっくりティータイム。体と心が次第にほどけていく至福のときは、気軽に楽しめる癒しの時間。今回は身近でありながらも、あまり知られていない紅茶の魅力に迫ります。
同じ茶の葉から作る3種類のお茶
「お茶」というと、何を思い浮かべますか? 緑茶、ウーロン茶、そして紅茶。まったく違うように見える3種類のお茶ですが、すべて同じ「茶」の木の葉から作られています。
違いは、製造方法。緑茶は茶葉を蒸らして乾燥させたもの、ウーロン茶は茶葉を発酵させ途中で止めた「半発酵茶」。そして、今回紹介する紅茶は茶葉を完全に発酵させたもので、「発酵茶」と呼ばれています。紅茶特有の香り高さや、べっ甲のような深い色合いは発酵によるものなのです。
紅茶の知られざるうれしい作用
紅茶にはさまざまなうれしい作用も。例えば、お肉料理や揚げ物など油分が多い食事と紅茶との相性はとてもいいと言われています。紅茶に含まれるタンニンが口の中に残った油をすっきりと洗い流し、味をリセット。食事を最後までおいしく食べることができます。
生活の中のさまざまなシーンで飲みたい
ケーキなど甘いものと一緒に飲むイメージがある紅茶ですが、実は生活の中のさまざまなシーンで、その実力を発揮します。例えば、仕事の合間に紅茶を飲めば、その香りで気持ちがリフレッシュ。気持ちが晴れない、というときにもピッタリです。ノンカフェインの紅茶を選べば、寝る前に気持ちを落ち着かせる飲み物として選ぶのもお勧め。洋のイメージがある紅茶ですが、意外にも和食と合うので、和洋問わず食事中のお茶として取り入れるのはいかがでしょうか。
おいしい紅茶の入れ方
自宅で紅茶を入れるとき、なんとなく入れていませんか?紅茶エキスパートの原口さんに紅茶のおいしさを最大限に引き出す、とっておきの入れ方を教えてもらいました。
■1 高いところから、 やかんに水を入れる
高い所からやかんに水を入れることで、水に酸素が多く含まれるようになります。こうすることで、ティーポットにお湯を注いだときに酸素の力で茶葉がジャンピング(上下に動く)しやすくなり、おいしさを引き出します。
ミネラルウォーターを使う場合は、ペットボトルに入った状態でしっかり振ることで酸素を含ませます。
■2 沸騰する直前で火を止める
完全に沸騰すると水中の酸素が抜けてしまうので、沸騰直前の96~98度で火を止めます。温度計がないときの目安としては、やかんから出る音が「シュー」から「コー」に変わったときです。
■ティーポットとカップに お湯を注ぎ、温める
お茶を入れるときに茶器が冷えていると、お湯も冷えてしまいます。適温のお湯で入れるためには、この事前準備が大切です。
■4 ティーポットに茶葉を入れる
茶葉の分量は、紅茶1杯につきティースプーン大盛1杯。海外など硬水の環境でお茶を入れる場合は、味が出にくいので茶葉の量を多めに(紅茶4杯に対しティースプーン大盛5杯程度)入れましょう。
■5 高いところからお湯を注ぐ
お湯に酸素を含ませるために高い所から注ぎましょう。熱湯なので、飛び散ったお湯でやけどしないように気を付けて。
■6 しばらく蒸らす
細かい葉の場合は3分間、大きめの葉の場合は5分間、蒸らします。この蒸らし中にポット内で茶葉がジャンピングして、茶葉がしっかりと開き、紅茶の味・香り・色を最大限に引き出します。茶葉がすべて下に降りて落ち着いたら、蒸らし終わりです。
■7 少しずつ カップに注ぐ
緑茶を注ぐ要領で、濃さが均等になるようにそれぞれのカップに少しずつ紅茶を注いでいきます。
紅茶の種類を知ろう
紅茶は産地によりさまざまな種類に分けられています。ここでは代表的な4種類の茶葉について紹介します。
ディンブラ
スリランカ産。1200〜1600mの標高で栽培され、「セイロン紅茶の女王」とも呼ばれる王道の紅茶。バラのような華やかな香り。
キャンディ
スリランカ中部のキャンディ産。標高600~800mの比較的低めの土地で栽培された茶葉。クセがない丸みのある柔らかい味わい。
ヌワラエリア
スリランカ中部のヌワラエリア産。標高1600〜1800mの高地で栽培された茶葉。気温の高低差が大きいため、香り高く、心地よい渋み。
ダージリン
インド北東のダージリン産。標高300~2200mに至る険しい斜面、ヒマラヤから吹き降ろす風を受けて育つ。“紅茶のシャンパン”と呼ばれ、爽やかな香りとキリっとした渋み。
意外と飲んでいる フレーバーティー
フレーバーティーをご存知ですか? 茶葉に花や果実、香料などを加えたもので、バラエティーに富んだ香りを持つ紅茶の呼び名です。実は、良く知られるアールグレイもフレーバーティーの1つ。紅茶にベルガモットという、かんきつの香りをつけたお茶です。甘い香りが好きな人には、ピーチティーやアップルティーも人気。
飲み方で変わる、 紅茶の魅力
ミルクティーやレモンティーには、何も加えずに飲むストレートティーとは違った魅力があります。そのときどきの気分や体調に合わせて、飲み方も変えてみませんか。
■レモンティーの特徴
◎甘酸っぱい風味の食べものと相性が良い
◎爽やかな香りでリフレッシュ
■ミルクティーの特徴
◎乳脂肪分が入ったクリーム系の食べ物と相性が良く、油分をすっきりさせる
◎牛乳がタンニンを包みこみ、渋みが苦手な人にうれしい優しいまろやかな味わい
取材・監修
キリンビバレッジ株式会社
午後の紅茶エキスパート
原口由一さん
紅茶に精通し、紅茶の入れ方など
セミナー講師も務める