夫婦の愛は、虚々実々?
Ⓒ2020 NHK, NEP, Incline, C&I
映画『スパイの妻〈劇場版〉』
■監督・脚本:黒沢清
■出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大、坂東龍汰 他
■配給:ビターズ・エンド/
配給協力:「スパイの妻」プロモーションパートナーズ
◎KBCシネマ、イオンシネマ戸畑、ユナイテッド・シネマなかま16、
ユナイテッド・シネマ トリアス久山にて公開中
映画を観終わった後って、誰かとその作品について語り合いたくなりませんか? ミステリアスな映画であればあるほど、観た人によってその見解は異なるもの。
今日ご紹介する『スパイの妻』の監督・黒沢清さんは、テレビのインタビューで、映画は「皆で観るもの」と、仰っていました。本当にそうだと痛感したのが、この作品。監督の術中にすっぽりとはめられます。
時は1940年、神戸で貿易会社を営む夫・優作(高橋一生)。妻・聡子(蒼井優)とは仲睦まじく裕福な生活を送っています。しかし、商用で赴いた満州で日本の恐ろしい国家機密を知ってしまい、世に知らしめようと動き始めます。帰国後、優作の行動に何か不穏なものを感じ、ついには夫の秘密を知ってしまった聡子。そこから彼女は大胆な行動にでます。どんなに自分が危険にさらされようと、優作を守るという強い決意の表れです。しかし、それとは裏腹に、底流にはそれぞれが関わる男女への嫉妬が見え隠れしながら、物語はクライマックスへとまっしぐら。光と陰が交錯し、ドキドキ感が止まりません。
戦争に翻弄される夫婦ではありますが、「本音はどうなの?」と、映画を観終わって誰かと話したくなるヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞作。奥の深い作品です。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。