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映画『イップ・マン 完結』
■監督・製作:ウィルソン・イップ
■出演:ドニー・イェン、ウー・ユエ、ヴァネス・ウー 他
■配給:ギャガ・プラス
◎7月3日(金)より中洲大洋ほかにて順次公開
理不尽な挑戦を受けて人はどう闘うのが正しいのか
この数週間、思い通りにならない生活に辟易としながらも、多くの事を考えられる時間が持て、感謝の念もあります。ですが新作の映画の話が出来ないのは、寂しく、気持ちが萎えていました。とはいえ、相手はウィルス、心して毎日を過ごしたいと、自らに言い聞かせています。
そのような世の中にあって、闘うことの意味を教えられた作品をご紹介いたします。
多くのファンを持つ、ブルース・リーが唯一師匠と崇める人「イップ・マン」シリーズの完結作です。
時は1964年、日本では東京オリンピックが開かれた年。来年に持ち越された今年のオリンピック延期の事を思えば、少し複雑な思いで映画を観始めました。アメリカではベトナム戦争も泥沼化、前年はケネディ大統領が狙撃されて命が失われました。時の大統領は、ジョンソン氏。公民権法が成立した年でもありますが、人種差別はなかなか解決できないアメリカ。そんな社会情勢にあって、イップ・マンは愛弟子のブルース・リーから、アメリカで行われる「国際空手道大会」に招待されます。イップ・マンはこのとき、妻を失い、自分はがん宣告を受け、まだ若い息子の行く末を案じて最良の方法を模索中。一方、息子は父親の想いに真っ向から反抗し我が道を行こうとします。月並みに言えば親の心、子知らず状態です。イップ・マンは病を押して、アメリカでの留学も視野に入れ、サンフランシスコへ。そこで目にしたのは、中国人の少女が壮絶ないじめにあいながらも、白人の男どもを相手に勇敢に闘っている姿。勿論、助けに入り、救い出します。
中国人に対する差別は想像以上に激しく、その渦に巻き込まれてしまいます。
アクションからも目が離せません。詠春拳の達人イップ・マン、太極拳の達人ワン・ゾンホア、そしてアメリカ海兵隊一等軍曹で空手の達人バートン・ゲッテズ他の闘いのシーンは迫力もさることながら、動きの美しさに、見とれてしまいます。
圧巻はイップ・マン役のドニー・イェンの所作。流れるような衣装の揺れに、うっとりしてしまいました。又、若きブルース・リー役のチャン・クォックマンは生き写し。
子を思う親の心情と、白人至上主義との闘いに感動と憤りを感じる自分がいました。
台詞に「人こそが文化」とありました。争いの起点は往々にして文化の違いにあるようだと常々思っています。
このような時代、感謝の想いを持つ大切さを、教えられた作品でした。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。