Ⓒ 2020「弥生、三月」製作委員会
映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』
■脚本・監督:遊川和彦
■出演:波瑠、成田凌、杉咲花 他
■配給:東宝
◎3月20日(金祝)よりユナイテッド・シネマキャナルシティ13 、T・ジョイ博多、シネプレックス小倉、TOHOシネマズ福津、T・ジョイ久留米で公開
人は一生の間、何人の人を愛するか、一人、それとも複数?
春、口にすると何と柔らかな音でしょう。耳にすると思わず、口元がほころびます。その春の到来を体感するのが、三月。
今回ご紹介する映画は、30年間に及ぶ一組の男女の愛情の変遷を三月だけの出来事で表現する作品です。タイトルを見て、桜が舞う柔らかな恋愛映画かなと想像し、スクリーンに向かいました。豈図らんや、波乱万丈な人生を歩む二人。やはり30年の月日は人を激しく変えていくものだと、教えられます。私にとってすでに通って来た筈の年代を、この映画で改めて再確認した気持ちになりました。
1986年3月1日、運命的に出会った二人。正義感溢れる女子高校生弥生(波瑠)、明るくスポーツマンの男子高校生太郎(成田凌)は、病弱な同級生サクラ(杉咲花)を励ましながら、3人仲良く高校生活を過ごしていました。太郎は弥生に好意をよせています。弥生も好意を持っていますが、サクラがどうやら太郎に好意を持っているらしいと自分の気持ちを抑え、二人のために尽力します。しかし、サクラの容態が悪化、亡くなってしまいます。
彼女の遺骨は小高い丘の桜の木のもとに埋葬されます。お互いの思いをまともに告げられずそれぞれの道を歩み始めますが、そこから正に波乱万丈。
太郎はサッカー選手を目指しながら、できちゃった婚、そしてアクシデント、離婚。弥生は紆余曲折の末、教員になり優しい歯科医(小澤征悦)と結婚。幸せな生活を送っていた弥生は2011年3月、太郎と偶然再会。25年の時を越え、二人は心に秘めた愛を確認します。しかし、現実に戻り、弥生は職場へ。そして、3月11日東日本大震災。二人のそれぞれの生活が一変します。この後、二人の愛の形はどのように描かれて行くでしょうか。
映画の冒頭で太郎は弥生にこう言います。「もし、40過ぎても独身だったら、俺が結婚してやるよ!」。スクリーンに向かいながら、何時それが成就するのか気になって気になって。1986年から3月の出来事だけを描くことの手法に只々、驚愕を覚えました。監督・脚本はテレビドラマ「家政婦のミタ」他、ヒットメーカーの遊川和彦さん。隅々に、彼のメッセージがちりばめられています。そこを探るのもこの映画の醍醐味です。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。