九州国立博物館　特別展「ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華 大様式の形成と変容」

　豪華絢爛。アニメや宝塚歌劇の「ベルばら」ですっかりお馴染みになった、ヴェルサイユ宮殿を象徴する言葉です。建設したのは「太陽王」と呼ばれたルイ14世で、王立美術アカデミーも創設しました。華麗なフランス絵画の潮流の始まりです。

　掲載した『ポリニャック公爵夫人』は、華やかな宮廷生活を想像させます。麦わら帽子に流行のファッションに身を包み、表情は明るく健康的です。王妃マリー・アントワネットの信頼が厚く、国王子女の養育係も務めました。描いたヴィジェ・ルブランも王妃のお気に入りの女性画家で、王立アカデミーへの入会も後押ししてもらいます。

　フランス革命で悲劇の王妃は断頭台へ送られますが、画家たちの美の追求はやみません。ウィリアム・ブグローの『青春とアモル』は、生き生きとした裸婦が登場します。アモルとは恋の神キューピッドの別名で、女性の姿を青春になぞらえて理想的な美を表現しています。

　ルイ14世の時代から印象派が登場する頃まで、３００年に及ぶフランス絵画の潮流を一望する今回の展覧会は、油絵69点のうち、17点が日本初公開です。ルーヴル、オルセー、ヴェルサイユ宮殿といった、そうそうたる美術館の所蔵品が含まれています。

　フランス絵画の歴史で最大の危機は、ナチス・ドイツの侵攻でした。それを救ったのが、美術史家ルネ・ユイグです。31歳の若さでルーヴル美術館の絵画部長に就任し、モナリザなど４千点の絵画を疎開させて、ナチスの略奪から守り抜きました。日本では東京富士美術館の開館展に協力するなど、日仏の文化交流に多大な貢献をしました。

　激動の歴史に思いを馳せながら、華麗なフランス絵画の数々を堪能してください。

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