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長谷川法世のはかた宣言75・ばし・な

長谷川法世のはかた宣言75・ばし・な


書店で『日本語全史※1』という新書が目についた。日本語の通史を総合的に描く初めての新書だそうだ。どんなものかひょいとめくったら「ばし」が出てきた。
「ばし」なんて、もうほとんど死語にちかい博多弁だ。聞けばわかるけれども、自分では使えない。博多弁「ばし」の用例として正確かどうかちょっと自信がないが、例えばこんな具合かな。

「鍵つけたままで、車ばし盗られたらどげんするね」
「自分が社長ばしのごと、人にあれこれ言うてくさ」

『日本語全史』233頁から、ばしの部分を引用してみる。
「「ばし」もこの期に現れて、強調や取立ての意を表し、多くは疑問・推量・禁止を表す句中に使われた。人ニ頸バシ切ラレウトテ不覚ノ人哉※2。この「ばし」は会話に用いられる俗語的なものと見られる。語源は係助詞「は」に副助詞「しも」が連接したものに由来する。…釜はしもひきぬかれなば、いかにすべきぞと思ひて※3…。〈…釜でも盗まれたならば、どうしたらいいかと思って…〉この「はしも」が目的を表す「をば」からの類推で「ばしも」となり、やがて「ばし+も」と分析されて、「ばし」の形でも用いられるようになった。」

言葉のはしばしを研究するのが国語の学者さんなんだと驚きながら、何が書いてあるかよくわからない432頁をいちおう読みとおして記憶に残ったのは、ばしをはじめ、これは博多弁ではと思ったいくつかの言葉だった。

そのなかの「な」を引用してみよう。

「連声※4は鎌倉時代には漢語に限られていた※5が、…のようにタ行音※6や、「オンナルジ(ご主人)」「ニンゲンナ(人間は)」…のようにナ行音にも出現するに至った。」、と室町時代に連声が和語にも及んだことが書いてある。「人間な」の「な」は、博多弁で「貴様ンな走らんか!」の「な」だろう。

「な」は気になる。博多祝い唄で問題となっている「な」があるのだ。一番の歌詞※7で「祝い目出度■ー若松様よ」の、■部分。祝い目出度なー」と「祝い目出度のー」の、「の」派・「な」派にわかれている。な派もの派も主張の根拠は、おおかた「親父がいいよった」「町ではそげん歌いよる」という伝承のようだ。

元新聞記者氏が、「伊勢の近くの村にそっくりの歌があった。聞きに行った」というので、どんなふうにそっくりですかときいたら、「そっくり」というばかり。誰か知りませんか。

※1)日本語全史…沖森卓也・ちくま新書
※2)人ニ頸バシ~人哉…延慶本平家物語 二末・文学熊野那智ノ滝ニ被打事
※3)釜はしも~思ひて…更級日記
※4)連声…安穏アンオン→アンノン、雪隠セツイン→セッチンのように変化すること。
※5)漢語に限られていた…それまでは「さんみ(三位)」「おんみょうじ(陰陽師)」のような漢語だけだったという。
※6)タ行音…タ行の例は、「コンニッタ(今日は)」「ジセット(時節を)」「ネンブット(念仏を)」が示されている。例語はキリシタン宣教師が天草で印刷した『天草本伊曾保物語』から採集されたもの。
※7)一番の歌詞…山形の花笠音頭とおなじ。ウィキペディアによれば、花笠音頭の起源は(諸説あるがとして)大正中期の土突き歌といい、民謡化したのは昭和初期という。

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