油は極力控えるべき それって正解?
カロリーが高いため「体に悪い」「太ってしまう」というマイナスイメージが強い油。とり過ぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因になってしまいます。
しかし油(脂質)は糖質、タンパク質と並ぶ三大栄養素の一つ。体を動かすエネルギーになるほか、脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きや細胞膜やホルモンの材料となる重要な栄養素でもあります。
細胞形成に欠かせない油
人間の体は約60兆個の細胞でできていて、細胞の一つ一つは脂質でできた細胞膜で覆われています。細胞は常に新陳代謝を繰り返していますが、食事による油の摂取を極端に控えていると体内の脂質が不足し、細胞の働きが低下する可能性があります。体を構成する細胞の形成に、油は欠かせません。
脳と油の関係とは?
また、人間の脳は水分を除く乾燥重量の約60%が脂質でできています。脂質のうち50%は神経細胞を保護するコレステロール、残り50%は神経組織を活性化させ、情報伝達をスムーズにするリン脂質やDHAです。
脳内の神経細胞の発達にも影響を及ぼすことから、脳の形成発達が著しい胎児にとって大切な栄養素とされていますが、認知症を予防するためにも、脂質は重要な栄養素の一つなのです。
体に良い油のとり方を知ろう
最近では油の健康性が注目を集め、良質な油を適量とることが推奨されています。
とはいえ、どんな油でも良いわけではありません。「油」とひと言で言っても、種類はたくさんあり、その特徴や含まれる栄養素、期待される効果もさまざまです。それぞれとり方にも留意すべきことがあります。もちろんとりすぎもよくありません。
体に良い油とは、効果的なとり方とは、どのようなものなのでしょう?
「油=害」とは限らないまずは油の種類を知ろう
食品に含まれる油は、肉の脂身や乳製品に多く含まれる「飽和脂肪酸」と、植物油や青魚に多く含まれる「不飽和脂肪酸」の2つに分けられます。
「飽和脂肪酸」は重要なエネルギー源である反面、動脈硬化や心疾患、糖尿病、肥満のリスクが高まるLDL(悪玉)コレステロール値を増やすことから、とりすぎに注意が必要です。
「不飽和脂肪酸」は一価不飽和脂肪酸のオメガ9脂肪酸と、多価不飽和脂肪酸のオメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸の3つに分けられ、いずれもLDL(悪玉)コレステロールを減少させる働きがあります。
「不飽和脂肪酸」の中でも多価不飽和脂肪酸のオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は体内で合成できない「必須脂肪酸」です。
特にオメガ3脂肪酸は、血液中の中性脂肪を減らしたり血液をサラサラにする効果のほかにも、脳機能の発達や維持にとても重要な役割を果たしています。エゴマ油やアマニ油に含まれるオメガ3脂肪酸のαリノレン酸や、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)は不足しがち。積極的にとり入れましょう。
一方、同じ必須脂肪酸のオメガ6脂肪酸は、食生活の西洋化や簡略化により現代人は過剰摂取ぎみ。サラダ油、ゴマ油など調理に多く使われる油はそのほとんどがオメガ6脂肪酸です。知らないうちにとりすぎてしまっていることもあるので注意が必要です。