家飲みがもっとたのしくおいしくなる、料理にぴったりな日本酒をその道のプロがペアリング。
まずは日本酒の基礎からおさらいして、あなたもツウの仲間入り。
其の一 日本酒ってこんなにおいしい 日本酒の基礎知識
日本酒とは、お米、米麹(こうじ)、水を原料に発酵させ、濾(こ)したお酒のこと。アルコール度数は22度未満という決まりがあります。これらの条件を満たすと清酒と呼ばれ、このうち日本国内で造られたものが日本酒です。
さらに日本酒は、原料や精米歩合などの要件を満たす「特定名称酒」と、原料や精米歩合に決まりがない「普通酒」に分けられます。「特定名称酒」は大きく分けると「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」の3つに分類され、さらに精米歩合など原料米製造方法などの諸条件により8つに分類されます。
特定名称酒 | 名称 | 原料 | 精米歩合 | 備考 |
---|---|---|---|---|
吟醸酒 | 吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 |
大吟醸酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | |
純米酒 | 純米酒 | 米・米麹 | 香味、色沢が良好 | |
純米吟醸酒 | 米・米麹 | 60%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好 | |
純米大吟醸酒 | 米・米麹 | 50%以下 | 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好 | |
特別純米酒 | 米・米麹 | 60%以下 (または特別な醸造方法) |
香味、色沢が特に良好 | |
本醸造酒 | 本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 70%以下 | 香味、色沢が良好 |
特別本醸造酒 | 米、米麹、醸造アルコール | 60%以下 (または特別な醸造方法) |
香味、色沢が特に良好 |
■情報満載のラベルはまさに日本酒の“顔”
個性あふれる日本酒のラベルには、その特徴を知ることのできる多くの情報がつまっています。ラベルの見方が分かると、日本酒選びがますます楽しくなります。
❶ 使用米 | 会津産五百万石(使用割合100%) |
❷ 原材料名 | 米・米麹 |
❸ 精米歩合 | 60% |
❹ アルコール分 | 15度以上16度未満 |
❺ 日本酒度 | +1 |
❻ 酸度 | 1.7 |
甘 口 | やや甘口 | 中 口 | やや辛口 | 辛 口 |
❶ 使用米
原料米の使用割合が50%を超えている場合のみ、原料米の品種を使用割合と併せた表記が可能。
❷ 原材料名
日本酒の基本的な原料は米、米麹(こうじ)、水、ですが、水は表示義務がないため水を除き使用量の多い順に記載されます。「醸造アルコール」を添加する日本酒もあります。
❸ 精米歩合
玄米を削り残った割合を%で示したもの。精米歩合が60%とされていれば、玄米を外側から40%削り取った状態ということになります。
❹ アルコール分
日本酒のアルコール度数は大体15〜16度程度。最近では8〜14度の低アルコールや、17〜20度の原酒タイプの日本酒など、さまざまな度数の日本酒が商品化され、選択肢も広がりを見せています。
❺ 日本酒度
日本酒の〝甘さ〟や〝辛さ〟を示す指標。一般的にプラスになるほど糖分が少なく辛口、マイナスになるほど糖分が多く甘口とされています。スッキリ辛口が飲みたければプラス、トロリとした甘口が飲みたければマイナスの数値を選びましょう。
❻ 酸度
日本酒の酸度は〝酸味(すっぱさ)〟を表しているのではなく、お酒の味わいにうまみをもたらす有機酸の量を示しています。酸度の平均は1.3~1.5ぐらい。酸度が高いと濃醇、酸度が低いとすっきり淡麗に感じます。
■日本酒の香り・味わいは、米の銘柄や精米歩合でどう変わる?
日本酒造りに適した白米を「酒造好適米」、一般的に「酒米(さかまい)」と呼びます。現在栽培されている酒米はおよそ100種類。下表のような代表的な銘柄があります。
使用する米の種類によって日本酒の味わいにも違いが生じるため、酒米の種類には作り手のこだわりも現れています。
酒米は、食用の米と比べると「心白」と呼ばれる米の中心部分が大きいためデンプンを多く含み、麹造りに重要な役割を果たします。一方、米の表層部分には雑味のもととなるタンパク質やビタミンが含まれているため、日本酒造りの際には表層部分を磨く必要があります。
精米歩合が低い日本酒は、米本来の華やかな香りと雑味のない味わいが特徴です。とはいえ、必ずしも精米歩合が低いほどおいしいというわけではありません。精米歩合が高い日本酒には、やや雑味があるもののうまみが出やすいため、人によってはその方がおいしいと感じることもあります。味わいの良し悪しは、それぞれの好みにもよります。
■主な酒米の銘柄
銘柄 | 米の特徴 | 味の特徴 |
---|---|---|
山田錦 (やまだにしき) |
「酒米」の王様ともよばれ日本で最も生産量が多い | 雑味が少なく香りが華やかで繊細な味わい |
五百万石 (ごひゃくまんごく) |
1980年代の新潟を発端とする淡麗辛口ブームを牽引 | キレがよくすっきりとしていてクセが少ない |
雄町 (おまち) |
江戸時代に生まれ酒米としては日本最古の品種 | 心白が大きく軸の太い味。芳醇な香りとコク |
美山錦 (みやまにしき) |
1978年に突然変異で発見された比較的新しい品種 | 繊細な香りを持ちクセのないスッキリとした味わい |
八反錦 (はったんにしき) |
広島県で誕生した酒米。大粒で心白が大きいのが特徴 | 硬いお米なので雑味が出にくく爽快なキレが特徴 |
■酒米の精米歩合
■コレも知りたい!
「醸造アルコール」の添加は悪いこと?
「悪酔いしそう」「質が悪そう」「かさ増しで入れているの?」というマイナスイメージが強い醸造アルコールですが、それは全くの誤解。醸造アルコールは主にサトウキビを原料として発酵させた植物由来の純度の高いアルコールのこと。醪(もろみ)に添加することにより、日本酒の味わいを整えつつ、華やかな香りを引き出しています。また、劣化や腐敗を防ぐ効果もあります。
日本酒の正しい保存方法は?
栓を開ける前は、お店の陳列状態を目安にし、冷蔵庫に入れてあるものは冷蔵庫へ、常温にあるものは常温でもOK。ただし夏場は室内の気温に注意。また紫外線に弱いので新聞紙などに包み、光が当たらないようにすると◎。瓶を横にして保管するとより酸化が進んでしまうので、必ず立てて保管しましょう。栓を開けたら冷蔵庫で保存し、3~5日以内に飲み切るのが理想です。
■製法による日本酒の種類
生貯蔵酒
搾り立ての日本酒をそのまま低温で貯蔵し、出荷時に1度だけ加熱(火入れ)したもの。「生」とつく日本酒の中では、品質管理が比較的しやすいことが特徴。生の風味がそのまま残っています。
生酒
日本酒は製造過程で「火入れ」と呼ばれる加熱処理を貯蔵前と瓶詰め前の2度します。その火入れを全くしないのが生酒です。日持ちはしませんが、生酒特有のフレッシュでフルーティーな味わいが特徴。
原酒
醪を搾った後に水を加えない日本酒のこと。搾った直後はアルコール度数が20度くらいあるため、加水をして15度前後に調整しています。原酒は搾ったままのお酒の濃醇な風味を楽しめます。
にごり酒
醪を搾る際に目の粗い布などに入れて搾り、あえて澱(おり)を残しているため、白く濁っています。澱を多く含むため、米本来の芳醇な香りと味わいをより深く感じることができます。
ひやおろし
春にできた新酒を貯蔵前に1度だけ火入れを行い、約半年間酒蔵の涼しい場所に貯蔵し、秋に瓶詰めして出荷される日本酒。ひと夏を越すことによって、まろやかでカドの取れた豊潤旨口に仕上がります。
長期貯蔵酒
ワインでは100年以上寝かせたものもありますが、日本酒は1年で熟成します。熟成香と呼ばれる特有の香りと美しい琥珀色が特徴。2~3年、あるいは5年以上貯蔵されたものもあり、「古酒」ともいわれます。
其の二 家飲みでたのしむプロおすすめのペアリング
日本酒と料理の相性がばっちりあった時の、あのなんとも言えぬ幸福感を知ったら、おいしさへの探求がとまりません!
(M)MELKEDおすすめ
(友)友添本店おすすめ
■魚の種類で日本酒を変えると◎
一般的に赤身の刺身ならうまみの強い日本酒、白身の刺身なら淡麗な日本酒が合うといわれています。脂がのって甘みも強い寒ブリなら、うまみのある辛口がおすすめです。
[コレも推し]
白菊酒造「大典白菊 純米吟醸 岡山朝日米55」無濾過生原酒
馬場酒造場「能古見(のごみ)」特別純米酒
■甘くて濃い味にはキレで対抗
すき焼きに負けない濃厚な日本酒やキレの良い辛口が好相性。具材が豊富なうえに味わいも変化していくので、日本酒の温度を変えながら合わせるのもツウな飲み方。
[コレも推し]
中島屋酒造場 「中島屋」純米大吟醸酒
溝上酒造「猿喰(さるはみ)」特別純米酒
■牡蠣(かき)のうまさがさらにグレードアップ
ポン酢味には純米酒が通説ですが、主役はうまみが強くとろけるような食感の牡蠣。風味を邪魔せずフルーティな香りで抱きしめる、香りのよい吟醸酒が相性抜群。
[コレも推し]
倉本酒造「KURAMOTO SE」純米酒
中尾醸造「幻(まぼろし)」純米吟醸酒
■食べて飲んでが止まらない!?
油っこい揚げ物は淡麗辛口と合わせることが多いですが、うまみも濃い唐揚げには甘すぎず酸味のある純米酒がおすすめ。油を流しつつもうまみを引き立て、後味もすっきり。
[コレも推し]
杵(き)の川「杵の川 13」特別純米原酒
萩錦酒造「土地の詩」純米酒
■トマトと日本酒は相性がいい!
トマト料理には酸味のある日本酒が合います。芳醇なうまみがある純米吟醸酒なら、トマトの酸味や肉のうまみをきれいにまとめ、華やかな香りが料理においしさを添えます。
[コレも推し]
岩瀬酒造 「岩の井」山廃純米吟醸酒
飯沼本家 「甲子林檎」純米吟醸酒
■魚×日本酒は洋食でもイケる
鮭やキノコのうまみに合わせて、うまみのある辛口の日本酒をチョイス。またワインをイメージして、優しい甘さがあり後味がすっきりシャープな酸味の強い純米酒もあり。
[コレも推し]
若駒酒造「若駒 カーニ馬ル」無濾過生原酒
麒麟山酒造「麒麟山 ユキノシタ」純米吟醸酒
新発見!意外なペアリング ~目からうろこの感動体験~
■友添本店おすすめ
大七酒造
大七(だいしち)
生酛(きもと)純米酒
720ml 1,390円
1年熟成で豊かなうまみとコクがあり、どんな料理にも合う懐の深い食中酒。酢豚のような脂っこい料理にもよく合います。生酛造りの代表格。
出羽桜酒造
出羽桜 古酒三種
熟成酒
300ml×3 3,850円
味わいが濃くまろやかな熟成酒。ねっとりしたチーズケーキと合わせれば、クセになるおいしさ。3、8、12年熟成の飲み比べも楽しい。
森酒造場
飛鸞(ひらん) Reborn
貴醸酒
500ml 1,925円
水の代わりに一部清酒で仕込んだ贅沢な貴醸酒。シロップのようにごく甘口ながら後味はスッキリ。キンと冷やして飲むか、アイスにかけても。
■MELKEDおすすめ
稲田酒造
稲乃花 白
無濾過生原酒
720ml 1,650円
辛口の麻婆豆腐には濃醇で甘酸っぱさの際立つこの日本酒を。辛さを和ませ、挽肉の脂っぽさを優しくリセット。次から次と手が止まりません。
仁井田本家
にいだのごさん
生酛(きもと)仕込み
720ml 2,000円
日本酒の濃いうまみとドライな酸味がぜんざいの甘みを引き立て、後味の甘ったるさも和らげます。温かいぜんざいには冷酒が合います。
旭鳳酒造
旭鳳(きょくほう)
純米大吟醸
720ml 1,760円
口の中に広がる干し柿の甘みとクリームチーズの酸味に、うまみがしっかりとある辛口の日本酒がいいアクセントに。ぜひ熱燗で。
取材協力
■◎友添本店:榊 晴海さん
友添本店総括店長。「出羽桜 桜花 吟醸」を飲んで感動したことがきっかけで酒店に入社。日本酒ファンを一人でも増やしたいとおいしい日本酒を求めて酒蔵に足を運び、その魅力を店舗で人々に届ける。日本酒はもちろん焼酎の造詣も深い。SSI唎酒師。
試飲や飲み比べ(有料)ができるカウンターを設置した、体験型のお酒選びができるおしゃれな酒店。日本全国から仕入れた自慢の日本酒の品数は県内でも指折りの豊富さ。なかでも福岡の酒蔵の品揃えは自慢。初心者から楽しめるお酒の体験イベントやワークショップを随時開催(詳細は公式HP)。
□友添本店/福岡市中央区春吉2-11-18
こちらは福岡市中央区春吉にある、福岡県内70蔵のお酒が全て揃う店、友添本店です。九州の地酒はもちろん全国の日本酒、焼酎、梅酒、ワイン、ウィスキーなど様々なお酒を取り揃えて、皆さまのご来店を心よりお待ちしております。配送・地方への発送も承ります。
■◎MELKED:荒木 純吾 さん
MELKED店長。日本酒バー「飛来」店主でもありペアリングはお手のもの。酒蔵の蔵人としてMELKEDオリジナルの日本酒を商品化するほどの日本酒好き。各地の蔵元に足繁く通い、日本酒1つ1つの価値やそこで得た感動を人々に伝えるために日々奮闘。
銘柄にこだわらず蔵元の思いを大切に仕入れているという日本酒は、ここでしか手に入らないレアな銘柄も多数。蔵元に寄り添い、一般の人に寄り添い、対人で日本酒を伝えていきたいと角打ちスタイルで試飲(有料)ができる日本酒に特化した2号店「MELKED小倉駅ナカ店」もある。
□MELKED(メルキド)本店/北九州市小倉北区須賀町14-5