太平洋のかなたで栄えた古代文明 高度な知識に壮大なピラミッドも!
ジャガイモ、トウモロコシ、サツマイモ、トマト、トウガラシ、カボチャ、落花生…、日本の食卓でもお馴染みのこうした食材は、いずれも中南米原産です。その中南米では、かつていくつもの文明が独自の発展を遂げました。
そのひとつ、カリブ海に突き出したユカタン半島を中心に、紀元前1200年頃から栄えたのがマヤ文明です。下の写真『赤の女王のマスク』は、神殿の考古学調査で深紅の辰砂(水銀朱)に覆われて出土しました。緑色の顔の表面は孔雀石、黒い瞳は黒曜石で、特別な儀式の時に着用した冠や首飾りも添えられていました。この出土品がメキシコとアメリカ以外で公開されるのは今回が初めてで、埋葬された石室をイメージした展示は想像力を掻き立ててくれます。
アステカ文明は、15世紀にメキシコの中央高原で成立しました。高さ約170㎝と等身大の『鷲の戦士像』は、翼を広げて今にも飛翔しそうな勇猛さを感じます。アステカ建国伝説に由来する鷲が蛇をくわえた図柄は、メキシコ国旗にもデザインされています。一方で、戦争捕虜や女性、子どもを生贄(いけにえ)として神にささげる宗教儀礼もありました。それは当時の人々の自然観によると考えられています。
テオティワカンは、中央高原の一角にある海抜2300mの盆地に築かれた古代都市です。太陽、月、それに「羽毛の蛇」の3大ピラミッドが築かれ、10万人が暮らしたといわれます。写真の直径1m余りの石の彫刻『死のディスク石彫』は、最も大きな太陽のピラミッド正面の広場から出土しました。頭蓋骨から浮き彫りの線が放射状に伸びていて、地下に沈んだ(死んだ)太陽をあらわすとされています。各ピラミッドは火や熱、水、豊穣、権力などを象徴し、関連性をもって造られたと考えられています。その美術や建築様式は後の文明にも引き継がれました。
地震に火山の噴火、干ばつといった自然災害に苦しみながらも、暦や文字など高度な文化を築きあげた古代メキシコの人々。不思議な世界観を探ることのできる貴重な機会です。
■赤の女王のマスク・冠・首飾り
マヤ文明 7世紀後半 パレンケ 13号神殿出土
(アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵)
ⒸSecretaría de Cultura-INAH-MEX. Foto:Michel Zabé
■鷲の戦士像
アステカ文明 1469~86年 テンプロ・マヨール 鷲の家出土
(テンプロ・マヨール博物館蔵)
ⒸSecretaría de Cultura-INAH-MEX. Museo del Templo Mayor)
■死のディスク石彫
テオティワカン文明 300~550年 テオティワカン 太陽のピラミッド 太陽の広場出土
(メキシコ国立人類学博物館蔵)
ⒸSecretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。
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■九州国立博物館
特別展 古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン
10月3日(火)~12月10日(日)
●一 般 2,000円(1,800円)
●高大生 1,300円(1,100円)
●小中学生 900円(700円)
休館日/月曜日(10月9日は開館、10月10日は休館)
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)