小学校の同級生だが、団塊の世代ゆえ「級友が多くて顔も知らなかった」と笑う
関東から故郷・福岡にUターンした理由
参勤交代のためにつくられた唐津街道沿いの町家で、素敵に暮らすご夫婦がいる。伴幸生さんと由美子さん。8年前、幸生さんのリタイアを機に、関東から由美子さんの実家に帰ってきた。古民家リフォームやUターン、、、。新しい暮らしぶりを先取りしているような二人だが、そんな気負いはない。
当時、由美子さんの母は91才。「グループホームに入居していたのですが、もう一度、この家で過ごさせてあげたかった」と、由美子さんは話す。結婚後は幸生さんの転勤で、ほとんどの時間を関東で過ごした。友人も多く、購入したマンションもある。しかし由美子さんはずっと、母と空き家になっている家が気になっていた。両親はもちろん、一緒に暮らした祖父や祖母との時間、夏休みになると従兄弟が大勢集まって2階でごろ寝をしたこと。「今帰らないときっと後悔する。最後に親孝行ができれば」と決断した。
小学校の同級生だが、団塊の世代ゆえ「級友が多くて顔も知らなかった」と笑う
円筒法のガラスや建具、ガイシなどを活用した空間は、懐かしさと温かさに満ちていた
60才からは自由時間 楽しく生きる選択を
商売をしていた店先から竃があった土間を、駐車場や段差のない広々とした廊下に。梁やガラス、建具など昔のものを残しつつ、足腰が弱くなった母の生活のしやすさを優先させた設計。関東で暮らしながら、メールで建築事務所とやり取りを重ねたのは幸生さんだ。「自分の親のことだから、妻は気兼ねしてたでしょう。ただ私は次男だったので、勝手ができました」。現役時代のエピソードを聞いた。どんなに遅く同僚や後輩を家に連れてきても、嫌な顔をされたことがないのだとか。Uターンは長い間支えてくれた、由美子さんへの感謝の気持ちでもあったようだ。
昨年、母が亡くなったが、介護している間もショートステイやデイサービスを活用して、お互いの趣味や旅行も続けてきた。「60才からは自由時間。最終的な生活の場をどこにするかまだ決めていませんが、二人が楽しく生きられる選択をしたいと思います」。