多くの人が子どもの頃、水ぼうそうにかかったことがあると思います。この水ぼうそうのウイルスが「帯状疱疹」の原因です。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは長い間、体内に潜伏しているのです。
普段は体に備わる免疫の力でウイルスの活動が抑えられています。しかし、加齢や疲労、病気などで免疫の機能が低下すると、ウイルスが再び暴れ出し、皮膚に痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれなどの症状が出ます。これが帯状疱疹と呼ばれる病気です。
帯状疱疹の発症率は50歳代から高くなり、80歳までに約3人に1人が発症するというデータがあります。
予防するには、免疫機能を低下させないよう健全な生活を送ることが重要です。具体的にはバランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠などを心がけ、精神的、肉体的ストレスをためないようにすることが求められます。
帯状疱疹の症状ですが、頭皮や顔を含む全身の一部で主に片側に赤い発疹やピリピリ、ズキズキする痛みが出ます。皮膚の症状は、ウイルスの活動が治まると自然に治ります。しかし、3カ月以上痛みが続く場合は「帯状疱疹後神経痛」(PHN)が疑われます。高齢になるほど、この神経痛の発症率が高くなる傾向があるといわれています。
国内では2016年から50歳以上を対象にした帯状疱疹のワクチンが承認されました。しかし、残念ながら、まだ保険の適用がなく、個人負担が大きいのが現状です。自治体の中には、補助を行っているところもあります。福岡県では、太宰府市や朝倉市が実施しているようです。
最後に治療法についてお話しします。帯状疱疹の痛みは最初の1週間ぐらいはウイルスによる炎症の痛みのため、一般的な痛み止めの消炎鎮痛剤が効きます。
PHNの痛みは「刺すような痛み」とか「焼けるような痛み」などと表現されます。PHN治療は、神経障害性疼痛治療剤など薬による治療が行われますが、それだけで不十分な場合は神経ブロック療法を併用して痛みを和らげます。この治療法は、神経や神経の周辺に局所麻酔薬やステロイド薬を注射して痛みを一時的に遮断します。この結果、血の巡りが良くなり、原因である神経障害が回復する後押しをします。
担当医
はかたペインクリニック外科・麻酔科 院長・博多区医師会会長
安田哲二郎(やすだてつじろう)先生
協力:福岡市医師会