立石山:山頂を少し南東に下ると、糸島市から唐津市に続く海岸線が眼下に広がる
写真提供=「のぼろ」編集部など
4月の下旬。本格的な登山シーズンがやって来ました。この時期は山の新緑が映え、美しい野の花があちこちで楽しめます。福岡県内の山開きはコロナ禍前の状況にほぼ戻り、次々と行われています。
今月号は、初心者などにおすすめの日帰りできる低山登山を紹介します。ただ、低山でも事故や遭難は全国で相次いでおり、油断は禁物。山歩き専門誌「季刊のぼろ」の編集部員などに安全登山の心構えや用意すべき装備についてお聞きしました。
中腹からの眺めも抜群
沖合ではマリンスポーツを楽しむ人の姿が見えた
■山開きを予定する福岡県の低山
安全登山の心構え 「のぼろ」編集部・南家弘毅さんに聞く
楽しい登山も道迷いなど遭難事故を起こすと大変なことになります。標高が低い山でも地面はでこぼこしているし、目印になる建物はありません。ですから、きちんとした準備が必要です。「季刊のぼろ」編集部員の南家弘毅(ひろき)さん(59)に安全登山の心構えを聞きました。
南家弘毅さん
登山は自然空間を上り下りするスポーツです。一番大事なことは、きちんと計画を立てることです。自分の体力や技術に見合うのはどの山か、登山をしている友人に聞いてみましょう。登山口はどこにいくつあるか、車はどこに止めればよいか、山頂までの上りと登山口までの下りに要する時間など情報収集しないと計画は立てられません。遅くとも午後4時までに下山できるよう、朝早くから登るのが山の常識です。当日の天気も調べてください。
登山経験があっても、過信は禁物。疲れたと感じたら休憩し、こまめに水分補給をしましょう。1時間にあめを1~2個なめるなど糖分補給も忘れずに。
電波の届かない山の中でも現在地が分かるようにGPS機能付きの登山アプリ(例えば、「ヤマップ」)をスマートフォンにダウンロードして使い方を予習しておきましょう。
登山アプリ「ヤマップ」画面
1人で山に登り、石につまずいて転倒し、意識を失った場面を想像してみてください。街では誰かが救急車を呼んでくれるでしょうが、人けのない山の中では期待できません。万一のため、経験豊富な友人らと登ることをお勧めします。
準備をしっかりやって臨めば、登山は心の底から楽しめる活動になります。一生の趣味にしていただきたいです。
山登り「三種の神器」(登山靴、ザック、雨具)
安全な山登りに関する心構えは理解できましたね。一方で、その安全を確かなものにしてくれるのが装備です。登山の「三種の神器」と呼ばれる物が登山靴、ザック、雨具です。福岡市中央区大名の山とスキーの専門店「ラリーグラス」(浦周平社長)で初心者向けの道具について取材しました。
●「三種の神器」の値段はさまざまですが、初めて山に登る人には、いずれも2万円程度のものがお薦めということです。
■登山靴
登山道は雨でぬかるみ、岩場や落ち葉などで滑りやすくなると歩きにくくなります。とりわけ、下る時には足首を捻挫する恐れがあります。登山靴はハイカットで足首が固定される設計になっているので、けがを負うリスクがスニーカーに比べると断然少ないそうです。
■ザック
日帰り登山ならザックの容量は20ℓ程度がピッタリ。リュックと違って背負いやすくクッション性のある素材でできているため、体の負担を軽減してくれます。男女兼用と女性用があり、女性用は肩のベルトを細くするなどの工夫が凝らされています。
■雨具
「山の天気は変わりやすい」と言われます。雨にぬれると、体温が奪われ、体力低下を招き、重大事故につながりかねません。雨具を選ぶポイントは防水機能に加え、熱や汗などの湿気を外に出す透湿性が重要です。
初心者におすすめの8山
■戸ノ上山 ◎北九州市:517.8m
桃山登山口から往復
途中にある大台ケ原からは関門海峡や北九州の市街地を眺めることができ、最高に気持ちが良い。
井原山 ◎糸島市:982.0m
小畑礼子さん提供
キトク橋駐車場から往復
花が多い山として知られ、ゴールデンウイーク前後は山頂付近のコバノミツバツツジが見ごろ。山肌をピンクに染める。
■立花山 ◎新宮町:367.0m
立花山登山口から往復
山頂からは福岡市街地がよく見える。分岐も多いので、立ち止まって確認しながら登ろう。
福智山 ◎福智町:900.5m
上野越登山口から往復
見どころは山頂のパノラマ眺望。付近には樹木がないので、暑い日は熱中症予防の対策を。
金立山 ◎佐賀市:502.7m
金立教育キャンプ場から往復
100人超の登山グループが毎週水曜に列をなす。ルートは15本以上あり、登山道はよく整備されている。
四王寺山 ◎太宰府市:410.0m
登山口多数あり
丘陵地の大城山、大原山、岩屋山、水瓶山の総称。日本最古の古代山城遺跡を散策できる。
宝満山 ◎太宰府市:829.0m
正面登山口から往復
小学生も普通に登る身近な山だが、意外にきつい。中腹の「百段ガンギ」は体力を奪う。