今月のテーマ 健康長寿の秘訣
「健康寿命」という言葉をご存知ですか? 健康寿命とは、健康上の問題に制限されず日常生活を送ることができる期間のことです。平均寿命より健康寿命は男性で約9年、女性では約12年も短いことが分かっています。
健康寿命を短くする主な原因は脳卒中、運動機能の低下、認知症で、これらへの対策をすることが健康寿命を延ばすことにつながります。まず脳卒中対策としては、40代以降から塩分・脂質を控えた食事や1日30分程度の運動など、いわゆるメタボ対策を行うことが大切です。
65歳前後になると、身体や脳の機能が徐々に低下する「フレイル」が起こり始めます。フレイルを抑えるために重要なものが「筋肉・運動」「食生活」「社会参加」です。
筋肉を維持するためには無理のない程度のスクワットなどのトレーニングがおすすめで、誤嚥性肺炎や窒息を防ぐために喉の筋肉も大切です。加齢と共に人と話す機会が減り、喉を使わなくなりがちですので、日頃から声を出すことを意識しましょう。
食生活では、若い頃と同じ感覚で太らないよう食事制限をしている方もよく見かけます。しかし、高齢になると体重が減り、筋肉量も減少し、身体機能が落ちて、身体的フレイルに陥りやすくなります。近年、「高齢者ほどしっかり食べる、特にたんぱく質を取ることが筋肉維持に役立つ」ということが明らかになりました。70歳前後を目安に食事への考え方をギアチェンジしましょう。
脳のフレイルが進むと認知症になります。認知症を防ぐには生きがいを作る、社会とのつながりを保つ、ストレス発散法を複数持っておく、さらに筋肉、身体機能をできるだけ保つなど「心と体の健康維持」をすることが有効です。
さらに高齢になるとその人が持つ体力や生理的機能の最大能力から日常的に使う能力を引いた「予備力」が低下します。予備力が少ないと、環境変化や病気などをきっかけに認知能力や身体機能の極端な低下が起こることも。自分にとって適正な栄養や運動をかかりつけ医に尋ねて、予備力を上げる工夫をしてください。また、心身の変化を見逃さないことも大切です。体だけでなく、認知症も早期発見することで改善したり、進行を遅らせたりできる場合もあります。気になる変化があればかかりつけ医に相談しましょう。
担当医 公立学校共済組合 九州中央病院
脳神経内科、リハビリテーション科
竹迫 仁則(たかば ひとのり) 医務局長
協力:福岡市医師会