【遺言書ってどれくらい作られているの?】
みなさまは、遺言書を書いていますか?いつか作らなければと思っているけれども、ついつい先延ばしにしてしまっていませんか。誰でも自分亡き後の未来を想像するのは嫌なものです。一説では脳が拒否反応を起こすとか。そんな実態を表すデータが、遺言書で多く作成されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」について存在します。
自筆証書遺言の作成件数は、明確な統計がありません。紙とペンさえあれば、誰にも気づかれずに作成をすることができるためです。しかしながら、自筆証書遺言で相続手続きを行う上で欠かせない手続きとして家庭裁判所での「検認」があり、この件数は公表されています。令和3年の自筆証書遺言の検認件数は、約 2 万件です。(司法統計年報より)
次に公正証書遺言。平成 28 年に作成された公正証書遺言の件数は約 10 万 5 千件。平成 31 年(令和元年)では約 11 万 3 千件です(日本公証人連合会調べ)。平成 26年から 4 年連続で 10 万件を超えていたのですが、令和 2 年はコロナウイルスの影響で作成件数が減少し、令和3年は約10万6千件と増加に転じました。ここ数年の間で、相続税の課税強化や相続トラブルなどがメ ディアでも大きく取り立たされる中、証拠能力の高い公正証書で遺言書を作成される方は増加傾向にあります。
令和3年の自筆証書遺言の検認件数と、令和3年の公正証書遺言の作成件数とを合わ せると、約 12万 6 千件。この件数が、1 年間で何らかの形で遺言書が作成・使用された件数のおおよその目安といってよいでしょう。
さて、みなさまはこの件数を、多いと感じますか?少ないと感じますか。
感じ方は人それぞれだと思いますが、私はとても少ないと感じます。なぜならば、統計によると日本人の令和 3 年の死亡者数は、約 143万 2 千人(総務省統計局調べ)。死亡者数から見た、相続発生時に使用される遺言書の件数は、約 8.8%です。 昨年遺言を作成した方全員がその年にお亡くなりになるわけではありませんが、お亡くなりになった人数に対して遺言書を作成していた方の数が圧倒的に少ないというのが お分かりいただけると思います。遺言書はお亡くなりになる方の 10 人に 1 人も作成していないのです。お亡くなりになられた方の多くの家庭で、自分亡きあとの遺産分けは遺された相続人に託されるということになります。
【遺言書は全員が備えるべき相続対策!?】
一切財産が無いんだよという方は別として、ほぼ全ての方が何らかの相続財産を残さ れていると思います。相続人も 1 人ではなく複数名いらっしゃることが多いです。相続税の申告は必要な方と必要でない方とがいらっしゃいますが、財産をどう分けるか、つまり遺産分割はほとんどの方がしなければいけないということです。遺産分割を決める話し合いが遺産分割協議ですが、これが一筋縄ではいきません。私が実務で経験したトラブルを集めたら書籍が出版できる程、様々な揉め事があります。血の繋がった親族や長年連れ添った方と言えども、個人の性格も各々の家庭の事情も異なる相続人同士が、何をどのくらい貰うかという財産の話になると、話がこじれます。要はお金をどう分けるかの話だからです。
財産の多い少ないに関わらず、遺言書は全員が備えるべき相続対策なのです。
【おすすめは信頼性の高い公正証書遺言】
私たちがおすすめする遺言書は、公証役場で作成する「公正証書遺言」です。次の表は、自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所の一覧表です。
自筆証書遺言は、保管制度の利用により、上記デメリットが一部緩和されます
自筆証書遺言は、手軽に安価で作成ができる反面、遺言書の作成や管理などに関して自己責任で行わないといけない遺言書です。一方で公正証書遺言は、多少の手間と費用とがかかる反面、証拠能力が高く安全性が高い遺言書です。
どちらの遺言が良い、悪いということではありません。どちらも有効な遺言書が手元にあれば、法律上は同等の効果を発揮します。
しかし、実務上は同等ではないケースも多く発生します。
例えば、金融機関での手続き。
公正証書遺言にて手続きを行うと、証拠能力が高いのでとてもスムーズに預金の解約などの手続きが行われます。提出する公的書類も少なくて済みますし、他の相続人の同意は不要です。
一方、自筆証書遺言で手続きを行うと、遺言とは別に金融機関所定の書類に、相続人全員の署名と実印をもらってきてほしいという場合があります。金融機関側も相続手続きに間違いがあってはいけませんので、自筆証書遺言の証拠能力も含め慎重に進めていくためです。
法律上は同じ効果なのに、なぜそのような差が生じるのか?
公正証書は公証人という公務員が作成する「公文書」で、自筆証書遺言は「私文書」だからです。
証拠能力が段違いなので、手続きする機関の信頼も段違いなのです。
このように、同じ内容の遺言であっても実務上の効果は大きく異なります。
高い証拠能力と安全性、自分亡き後に相続手続きをする相続人の手間などを考慮すると、 公正証書遺言にかける手間と費用には、それに代わるだけの価値があるものだと言えます。自らに起こる相続は、泣いても笑っても1回きり。その1回きりの大イベントをどれだけ安心に、確実に行うことができるか。そういう観点で遺言書の作成を考えている人は少ないです。
その遺言書が実行される時、残念ながらみなさまはこの世にいません。そんな中で確実にみなさまの想いを実現させるための方法として、公正証書遺言の作成をおすすめいたします。
㈱福岡相続サポートセンター
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上級相続支援コンサルタント
植野 直孝