火砕流が封印した色彩豊かな古代都市 発掘調査で蘇った人びとの暮らしぶり
火砕流、31年前に起きた雲仙普賢岳の噴火でその脅威を知りました。
ポンペイは、イタリア南部の港町ナポリ近郊にあった人口1万人ほどの古代都市です。西暦79年、近くのヴェスヴィオ山が噴火し、半日にわたって大量の灰や軽石が降り注ぎました。その後に流れ下ってきた高温の火砕流で、街は完全に封じ込められます。
それから2000年近く。これまでの発掘調査で、色彩豊かな都市文化と人びとの暮らしぶりが次第にわかってきました。
最大の邸宅だった「ファウヌスの家」は、いくつものモザイク画で彩られていました。そのひとつ、広間につながる部屋の床に描かれていたのが、左上の写真の『ネコとカモ』です。宴会の料理に使う鳥や魚の貯蔵庫に忍び込んだ猫が、何ともリアルに表現されています。自然の石や陶器にタイル、切り取ったレンガといった細かな材料を使った精密な装飾は、制作技術の高さを示しています。
その下の写真『エメラルドと真珠母貝のネックレス』は、長さ34.5センチ。鎖のような金色のベルトに、カットしたエメラルドと加工した真珠母貝が交互にはめ込まれています。どんな女性の胸元で輝いていたのでしょうか。優雅な暮らしぶりを彷彿とさせます。
家々には神々の像も祀られていました。頭に月桂冠をかぶった凛々しい姿は『擬アルカイック様式のアポロ』です。肩に垂れ下がった三つ編みは、ギリシャのアルカイック様式を真似たもので、素朴ながら若々しさが漂います。
展示には、青銅製の竿秤やバケツ、湯沸かし器といった日常の生活道具、ピザのように切れ目を入れた炭化したパンもあって、当時の生活ぶりを垣間見ることができます。今回はすべて撮影OKです。
漫画「テルマエ・ロマエ」のヒットで、古代ローマが身近になりました。火山と温泉に親しむ私たちに、ポンペイの歴史は何かを問いかけているようです。
ネコとカモ
エメラルドと真珠母貝のネックレス
擬アルカイック様式のアポロ
Photo ⒸLuciano and Marco Pedicini
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。
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■九州国立博物館
特別展 ポンペイ
10月12日(水)~12月4日(日)
●一般 1,900円(1,700円)
●高大生 1,200円(1,000円)
●小中生 800円(600円)
休館日/月曜(11月28日は開館)
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)