仕事を引退した後は、年金と貯金で生活する人が多くなり、
これまで以上に資産管理が大切になります。
いま一度、「お金」の価値について考えてみませんか。
時代によって変わる 貨幣価値と資産管理
皆さんは金融資産をどのように所有していますか? 預金、投資などさまざまな方法がありますが、貨幣価値や資産管理は時代によって変わります。
昭和30~50年代にかけてはインフレの時代。物の値段が上がり、貨幣価値が下がる状態が著しく起きていました。同時に給与も上昇する高度経済成長期で、しかも好景気。インフレで貨幣価値自体は下がるものの、銀行の預金金利が10%を超える場合もあり、「預けているだけでお金が増える」という時代でもありました。
平成になるとバブル崩壊による経済停滞により、デフレ期に突入。預金金利は下がりましたが、物の価値が下がりました。貨幣価値が上がっていたため、預金しておくことが安全な資産管理とも考えられていました。このような経験を通して「貯金として預けておくのが一番安心」と感じている人が多いのかもしれません。
コロナ禍や国際情勢でインフレの時代に突入
平成~令和初頭まで長く続いたデフレでしたが、令和4年の今年からインフレの時代に突入したと考えられています。
(1)コロナ禍の不況対策として世界中で貨幣が多量に供給されたこと(2)半導体や木材などをはじめとする物資不足(3)脱化石燃料への動きやウクライナ情勢などから石油やガスといった化石燃料の高騰―が主な要因です。皆さんも身の回りの品が次々と値上げされていると感じていませんか。
厚生労働省のデータでは、上昇する物価に対して平均年収がおよそ30年間で18.8万円減少しています。つまり物価の上昇に対して、平均年収が伸び悩んでいるのです。さらに2013年からデフレ対策として金融緩和政策がとられ、その影響で現在も低金利が続いています。
現在インフレが起こりつつあるものの、預金は低金利のため増えにくい状態です。かつてのように、貯金しておけば安心という時代ではないのです。
※厚生労働省「平均給与(実質)の推移
(1年を通じて勤務した給与所得者)」より
これから考えたい 老後資金と投資
金融状況が変化する中で、特に心配になるのは老後資金ではないでしょうか。2019年に金融審議会が市場ワーキング・グループ報告書の中で「老後資金として2000万円必要」と発表し、大きなニュースになりました。無職の高齢夫婦世帯の生活費が毎月約5万円の赤字となり赤字分は貯蓄から穴埋めされる、と計算されたことが根拠となっています。しかし、インフレで物価が上がると毎月の赤字額がさらに上がる可能性があり、老後資金は2000万円以上必要となります。
だからこそ今、世情に合わせて価格が変動する投資を無理のない範囲で行うことの大切さが見直されています。投資方法としてはつみたてNISA、株式、債券、投資信託、海外投資などがあげられ、ローリスクローリターンからハイリスクハイリターンのものまで商品はさまざまです。初心者にはまずはローリスクローリターンのものから検討してみるのがおすすめです。気になる人は、証券会社や銀行などの金融機関へ相談してみてはいかがでしょうか。