「次はどんな本を読もう?」
そんな思いをめぐらすのは楽しい時間。
でも、自分で選ぶといつも似たようなものになったり
これまでにたくさん読んできたからこそ
読みたいものが思い浮かばないこともあるのでは?
そこで福岡県各地の「本のプロ」図書館司書の皆さんに
イチオシを聞きました。
次の1冊の参考にしてみてはいかがでしょうか?
福岡県立図書館 司書:F.Kさん
粗にして野だが卑ではない
石田禮助の生涯
●城山 三郎:著/文芸春秋/文春文庫
多発する重大事故や赤字路線廃止などの経営合理化、通勤ラッシュの緩和…、問題が山積する国鉄のトップ。それが国鉄総裁でした。「粗にして野だが卑ではない」という理念を抱き、誰もやりたがらないこの仕事に、石田禮助は78歳にして乗り込みます。そんな気概のある明治人の波乱万丈の生涯を描く一冊。気骨ある、尊敬できる先人の物語は、混迷の時代にある私たちを勇気づけてくれます。
福岡市総合図書館 読書相談員:中畑文美さん
シニアのための防災手帖
●三平 洵:監修/産業編集センター
いつ何時起こるか分からない災害。準備は大丈夫ですか?日本は多種多様な災害に見舞われる災害大国。わたし自身も、福岡西方沖地震や熊本地震、豪雨災害などを経験して、防災への意識が高まりました。いざというときに困らないように、防災グッズを揃えることはもちろん、それを実際に使うことができる技術や災害を乗り越えるための知識も必要だと感じます。知識を深めて災害に備えるためにも、ぜひ読んでほしい1冊です。
行橋市図書館(リブリオ行橋) 司書:K.Hさん
モモ
●ミヒャエル・エンデ:著/岩波書店/岩波少年文庫
短い休息時間に、ありったけの娯楽を詰め込み、急いで日常に戻る。それだけが、大切な「自分の時間」の使い方なのでしょうか―。これは、人間の時間をむしり取っていく“時間どろぼう”に決して屈さず、懸命に立ち向かった、一人の聡明な少女の物語です。もし、ふとした瞬間に、「時間がつぶれない、退屈だ」と感じてしまうのなら、それは、あなたの時間が「灰色の男たち」に奪われていたからかもしれません。
北九州市立中央図書館 司書:田﨑紗代子さん
母のはなし
●群 ようこ:著/集英社/集英社文庫
主人公のハルエが、念願の離婚をきっかけにパワフルに活動をしていく姿を描いた物語です。浪費家で自分勝手な夫と、我慢しながら結婚生活を続けていたハルエ。能天気なハルエが周囲の人間を振り回しながらも、毎日を楽しみながら老後を過ごしている姿からは、元気をもらえるのでは…。読むとどんな母親でも自分と同じ娘の時代があったことを改めて感じ、母親への思いが変わるきっかけになるのではないでしょうか。
岡垣サンリーアイ図書館 司書:小川早紀さん
さよなら妖精
●米澤 穂信:著/岩郷重力+WONDER WORKZ。:装幀/東京創元社/創元推理文庫
2021年下期直木賞受賞作家・米澤穂信さんの初期作品です。四人の高校生と、ユーゴスラヴィアから来た少女・マーヤが過ごす謎に満ちた日常。ほどなくして、少女は内戦燻ぶる祖国に帰っていきます。6つの国から成り立っていたユーゴスラヴィア…彼女はどこへ帰ったのか?マーヤとの思い出をヒントに、主人公たちがたどり着いた結論とは。私たちが過ごす日常、そしてこの世界について深く考えさせられます。
柳川市立図書館 司書:永田弘子さん
大根はエライ
●久住 昌之:文・絵/福音館書店
「孤独のグルメ」の著者、久住昌之氏による大根についての豆知識満載の大根愛あふれる絵本です。大根の特徴、おいしい食べ方、使われ方などが、かわいいほのぼのとしたイラストと共にユーモラスに描かれています。出しゃばらず相手の味を引き立たせる謙虚な大根が好きになりますよ。あらためて大根のよさやすごさがわかり、「大根はエライ」「大根がもっと食べたい」と思える大人にもおすすめの絵本です。
久留米市立中央図書館 司書:飛弾奈津子さん
腸内細菌博士が教える
免疫力を上げる食事術
●藤田 紘一郎:著/ワニ・プラス/ワニブックスPLUS新書
私たち人間の体には、病気を防ぎ、治すための「免疫」という機能が備わっています。なかなか収束しないコロナウイルス。何の病気においても常日頃、免疫力を高めていれば、体を守り、重症化を避けることができます。免疫の力は、日々の生活に大きく影響されます。この本は、毎日の食事を中心に、どのように生活すれば免疫力を高めることができるかが、大変わかりやすく書かれています。参考にしてみてください。
筑紫野市民図書館 司書:石丸絵里さん
グリーンファーザー
●杉山 満丸:著/ひくまの出版
この本は日本人が知るべき無名の日本人の偉人伝です。父は夢野久作。祖父は政界の黒幕と言われた杉山茂丸。「杉山三代」とよばれ、筑紫野市ゆかりの人物です。杉山龍丸は、日本政府からの援助も得られない中、私財を全て投げうってインドの広大な砂漠を緑化する偉業を遂げた「インド緑化の父」として世界から称賛されている人物です。平易な文体で子どもでも読めます。絶版本となっていますので最寄りの図書館に問合せてください。
大野城まどかぴあ図書館 司書:井上由香里さん
返事はあした
●田辺 聖子:著/集英社/集英社文庫
25歳の誕生日を迎え崖っぷちに立たされたルル。人生を共に歩む相手を見極めていく過程で変化していく心情には思わず共感してしまいます。心と心の繋がりが大切なのはいつの時代も変わらないものです。タイトルの「返事はあした」は、人生の主導権は自分にあるということを意味します。結末は誰を選ぶのか、自分の選択と答え合わせをしてみてはいかがでしょうか。テンポのある大阪弁の会話が心地いい恋愛小説です。
春日市民図書館 司書:M.Sさん
天上の葦
●太田愛:著/KADOKAWA/角川文庫
白昼、渋谷のスクランブル交差点の真ん中で、老人は天を指さしながら息絶えた…。そのメッセージとは何か? 人気ドラマの脚本家として有名な著者が描く上下2巻の長編です。冒頭から強烈な印象を与え、謎が謎を呼ぶ怒涛の展開。絶体絶命の危機が何度もおとずれるスリルとスピード感にページをめくる指が止まりません。現代社会に警鐘を鳴らしているのでは?と思える社会派サスペンス。ぜひじっくりと読んでみてください。
直方市立図書館 司書:吉峯和奏さん
マカン・マラン
二十三時の夜食カフェ
●古内 一絵:著/中央公論新社
元エリートサラリーマンにして今はド派手なドラァグクイーン(派手な衣装をした男性)のシャール。そんな彼女が深夜にだけ営業する不思議なお店、そこには様々な悩みを持つ人が集まってきます。作中に出てくる薬膳の知識も楽しく、「春のキャセロール」「世界で一番女王なサラダ」などシリーズ4作全て目次が魅力的。ずっと欲しかった言葉が落ちてくるようなシャールさんの優しさと強さ、心が温かくなる料理の数々、お守りのように手元に置いておきたくなります。
太宰府市民図書館 司書:上村恵子さん
大切なこと
●内田 彩仍:著/PHP研究所
30代でナチュラルな暮らしぶりが脚光を浴び、今なお多くの女性に支持されている人気スタイリストの著者。福岡県在住で私と同年代。一緒に歳を重ねている気分で読んでいます。50代になり、マンションから一軒家へ引っ越したり、病気をして出来なくなったことは手放そうと決意したり…、と著者の生活も変化しています。でも、センスが光る日々の過ごし方は変わりません。家で過ごす時間が増えた今こそ、大切なことを教えてくれます。