強烈な配色が見る人を圧倒します。原色のぶつかり合いです。「芸術は爆発だ!」岡本太郎はそう叫びました。
半世紀ほど前、大阪万博のシンボル『太陽の塔』と同じ頃に、メキシコのホテルからの依頼で制作したのが、幅30mもの大壁画『明日の神話』です。上は今回展示される大壁画の原画で、それでも幅10mを超える大作です。
中央に描かれている白い骸骨は、原爆のさく裂で燃え上がりながらエネルギーを放出しています。当時は米ソ冷戦の真っただ中、核戦争の恐怖が迫っていました。右側には太平洋で死の灰を浴びた第5福竜丸が配置されています。神話の過去から未来へ。芸術と社会との関わりを意識した岡本は、核戦争という不幸を乗り越える人類の未来を、この大作に託し、自ら『明日の神話』と名付けたといいます。
壮大なスケールの一方で、各地に残された日本の美にもまなざしを向けました。自らカメラを手に全国を回り、ファインダーを通して日本の美を記録しました。青春時代をパリで過ごし、戦争写真家として名を遺すロバート・キャパとも交流があった、岡本ならではの写真表現です。残された膨大なネガから、新たにプリントした写真も今回展示されます。岡本が美を見出した縄文土器や、沖縄の聖なる祭り「イザイホー」の写真から、そのまなざしを読み取ることができます。
東京五輪から大阪万博へ。奇しくも同じ流れの中にありながら、今は高度経済成長当時とは裏腹な閉塞感が漂っています。岡本太郎の感覚こそ、重苦しい現状を打ち破るのにふさわしいのではないか。そんな期待を感じる展覧会です。
繁竹治顕
元NHK記者。1993年全米オープンゴルフ、1994年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)