「人生100年時代」が到来すると、ただ長生きするだけでなく、いかに健康で自分らしく暮らすかが、一層重要視される社会になります。中でも、幅広い世代が関心を寄せるのが「認知機能低下予防」。認知症や物忘れに対して、危機感を抱く人は多いとされます。ここでは、脳の健康につながる話題や多彩な脳活コンテンツを取り上げ、認知症予防や健康寿命延伸のためのヒントを探ります。
脳の健康を意識して 運動、食事、睡眠、脳トレ
いまだ解明されていない点も多い神秘の器官「脳」。出来事を記憶する、体を動かす、言葉を交わす、感情をつかさどるなど、私たちは日常で何をするにも脳を使います。
一般的には正常でも30代ぐらいから加齢による萎縮が始まるとされますが、それがそのまま認知機能の低下につながるわけではないとか。そこで長らく注目されているのが、脳の活性化のための取り組み。運動、食事、睡眠のほか、パズルや計算などの「脳トレ」もその一つです。
脳トレに関しては、2019年5月に英国のエクセター大学とキングス・カレッジ・ロンドンの研究で、「クロスワードパズルや数独などを定期的に取り組む50歳以上の人は、そうでない人に比べて注意力、推論力、記憶力の評価が優れている」という結果も学術誌に発表(※)されています。
この特集では脳によい「食」について、そして脳トレ問題を紹介します。
※参考:「International Journal of Geriatric Psychiatry」(2019年5月)
西日本新聞社では、賛同する行政や団体、企業とともに「脳活新聞」プロジェクトに取り組み、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による「健康寿命の延伸」「認知症予防」の実現を目指します。
脳活を始めよう 食の脳活
■脳の元気を目指し 調理と食事を大切に
認知機能低下の予防には、何より生活習慣病の予防や治療が大切とされます。そうなると、やはり気になるのが毎日の食事。「健康長寿を目指すには、まずは食生活を大切に。調理する過程も有効です」と管理栄養士の大部正代さんは話します。
大部 正代(おおべ まさよ)さん
FOOD&HEALTH協会ククルテ代表理事、管理栄養士。福岡県栄養士会会長、日本病態栄養学会理事、福岡県糖尿病療養指導士会会長。浜の町病院、中村学園大学栄養科学部教授を経てククルテを設立。
■脳を刺激する 調理と和の食卓
「健康の基本は食事から。特に脳を働かせるには、栄養をしっかりと取る必要があります。そして調理には、脳を刺激する要素が詰まっています」と大部正代さんは話します。
メニューを考える/買い物に出る/食材を選ぶ/調理の段取りを考える/調理する/盛り付ける/彩りを見る…など、料理は脳を刺激する作業の連続で完成します。箸や包丁、はさみを使うといった手作業が連動しているのもポイントです。「脳の元気のためにも、男女や年齢を問わず、調理する時間を持ちたいですね。毎日でなくてもいいし、簡単なメニューでよいので」
さらに、箸を使って魚の骨を外す、小さな豆をつまむなど、和食を食べるには、脳によい動作が多いといいます。「最近は、若い人もスプーンを使う機会が増えているようですが、脳のためには意識してお箸を使うとよいと思います。お箸の正しい持ち方も、今一度確認したいですね」
■優秀な青魚 缶詰を上手に利用
脳によい食材は何があるでしょう。「青魚に豊富に含まれる成分のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、よく知られています。皆さんも耳にされたことがあると思います」。いずれも記億力、注意力、判断力の維持などによいとされる成分。脳神経の保護や再生、脳細胞の活性化、認知症の進行に関与するとされるアミロイドタンパク質βの大脳皮質への沈着を減少させる作用があると報告されています。
魚をさばいて調理するのが理想的とは分かっていても、もう少し気軽に準備したい人も多いはずです。「そんな時は缶詰の利用をおすすめします」。最近はサバ缶などの種類も多く、好きな味を見つけるのも楽しそうです。
「ヒジキやこんにゃくなど、よく咀嚼(そしゃく)する必要のある食材も、脳への刺激にうまく取り入れてみましょう。かむ力、味わう楽しみのためにも、歯の健康にも気を配りながら」。〝脳の元気〟を意識した毎日の食事で、健康長寿を目指したいですね。
■サバとキノコとこんにゃくのペペロンチーノ
缶詰を使ったちょっとした1品。よく「かむ」動作も脳への刺激になります。キノコ類は好きな2、3種類を。
サバとキノコとこんにゃくのペペロンチーノ
材料/2人分
サバの水煮缶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g(約1缶)
糸こんにゃく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60g
マイタケ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g
エノキ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30g
シイタケ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g
塩こうじ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
ニンニク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g(1片)
唐辛子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量(好みで)
オリーブオイル・・・・・・・・・・・・・2cc(小さじ1/2)
薄口しょうゆ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1cc
バジル、パセリなど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
作り方
1. マイタケは軽く裂く、エノキは2、3㎝の長さに切る。シイタケは3㎜程度の厚さに切る。
2. 1を混ぜ、全体の分量の5%程度の塩こうじを入れて下味を付ける。
3. 糸こんにゃくを食べやすい長さに切りゆでておく。
4. フライパンにオリーブオイル、みじん切りにしたニンニク、輪切りにした唐辛子を入れ火にかける。5. ニンニクの香りがしてきたらキノコ、こんにゃくを加えて炒める。
5. 全体に火が通ったら、薄口しょうゆを鍋肌から入れ、大きめにほぐしたサバを加えて温める程度に炒める。
6. 器に盛り、彩り、香りのアクセントにバジルやパセリ、ネギをあしらう。
※塩こうじの代わりは塩・こしょう少々で対応
栄養価(1人分)
エネルギー109kcal/たんぱく質11.5g/脂質6.5g
炭水化物3.3g/食物繊維2.1gr/食塩相当量0.3g
■FOOD&HEALTH協会ククルテ
「健康寿命の延伸に寄与する食」をテーマに調査、指導、研究、講演やセミナーなどを展開。理事を務める大部さんが講師の料理講座(月2回)も好評。
脳活を始めよう 脳トレ問題
文字や図形の認識、短時間の記憶など、脳を刺激するための「脳トレ」問題。気軽に楽しみながらトライしてください。
■天神にeスポーツの総合施設誕生「Challenger’s Park(チャレンジャーズパーク)」
対戦型のコンピューターゲームで腕を競うeスポーツの九州最大級の施設「チャレンジャーズパーク(愛称:チャレパ)が8月、福岡市・天神にオープンしました。
試合やイベント開催時には約200㌅の大画面モニターを前に最大10人の選手が並ぶ円形スタジアムのほか、20台のゲーム用パソコンを設置したプレイエリア、講座などを実施するスタディルーム、カフェなどが整備されています。
運営するQTnetの担当者は「脳の活性化を図る健康スポーツとして、シニア向け講座も実施したい」と話します。天神でeスポーツの脳活タイムを過ごしてみては。
チャレンジャーズパーク
福岡市中央区渡辺通4-9-25天神ロフトビル8階
西日本最大級のeスポーツ総合施設【esports Challenger's Park】
https://challepa.jp/【esports Challenger's Park】は、eスポーツの様々な要素を集約するスポットとして、ここに集う人々とともに成長し、eスポーツの普及・発展に貢献します。(運営:株式会社QTnet)