新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続いている、昨今。活動自粛の影響がさまざまな業界に影を落とし、経済への深刻なダメージが危惧されています。
老後の資金計画など、お金と真剣に向き合う世代であるぐらんざ読者にとっても不安な状況ではないでしょうか。
そこで、ファイナンシャルプランナーの白浜仁子さんに、ぐらんざ世代の年金への影響や家計の考え方を伺いました。具体的な影響を知り、対策を行うことは、将来の安心へつながるはず。先行き不透明なウィズコロナ時代だからこそ、お金と向き合いませんか。
※ここで紹介する制度等は2020年9月1日時点の情報に基づくものです
現役世代への影響
■再雇用の条件など 今一度確認を
時代の流れによって定年を65歳に引き上げる企業もありますが、多くの企業では60歳で定年を迎え、定年後再雇用制度で引き続き雇用されます。そこで注意してもらいたいことが再雇用の条件です。例えば、雇用されている企業の業績が大きく落ちている場合、再雇用の条件が悪くなり、当初の予定通りに行かない可能性も。定年をこれから迎える人は、条件は決まっているからと楽観視するのではなく、人事など管轄部署に念のため確認しましょう。
■収入の落ち込みに備え 前倒し貯蓄を
コロナの影響に限らず自営業の人は業況により減収の可能性があります。また、会社員でも勤め先の業績が落ちている場合、人件費の削減で残業時間の短縮やボーナスカットによる収入減が起こることも。例年の収入を想定して老後の資金計画をしているにも関わらず、減収する可能性がある場合は計画の見直しが必要です。50~65歳の人は、老後資金を貯めるラストスパートのタイミング。収入が実際にダウンする前に、余裕があれば貯蓄の前倒しを。また、不必要な出費はないか若い頃のように初心に戻って生活費の見直しを行い、減収時に備えましょう。
■確定拠出年金は 出口戦略を考えて
「企業型確定拠出年金」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に加入している人は、いつ運用をやめて給付金の受け取りを始めるのか出口戦略を考えましょう。
確定拠出年金は、60歳から給付を開始できる制度。ですが、無条件に「60歳になったら給付を始める」ということは避けた方がベター。投資信託などの運用商品を選択している場合、止めるタイミングによって運用益が変わります。60歳の時点で運用益が落ちているにも関わらず、そのタイミングで給付に切り替えた場合、受け取り金額は掛け金を下回っていることもあります。給付金を多く受け取るためには、運用益が上がるまで運用し続けることが必要です。反対に運用益が上がっている場合は、60歳になる前に早めに投資信託商品から元本が保証される定期預金等へ移し変えることでリスクを避けられます。掛け金の拠出は原則60歳までですが、運用は70歳(2022年からは75歳)まで続けることができます。どのタイミングで給付に切り替えれば、より多くの運用益を得られるのか、長い目でタイミングを計りましょう。
年金世代への 影響
■景気・物価の変動に 強い年金制度
現在、年金を受給している人の中には、景気が不安定になることで、もしインフレが起これば、相対的に受給額の価値が低くなってしまうのではと思う人もいるかもしれません。しかし、国民年金、厚生年金の受給額は高齢化による一定の調整はあるものの、インフレ率や現役世代の賃金によって毎年微調整が行われています。このため、物価が上昇しても、受給額の相対的な価値はほぼ一定。反対に預貯金は、インフレ・デフレによって価値の変動があります。一口に自分の“お金”と言っても、その価値はさまざまです。
国による年金運用
■年金運用の損益に 一喜一憂しない
公的年金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、積立金を株や債券で運用しています。このため、新型コロナウイルス感染症の影響で景気が下向きになると公的年金の運用損失が大きくなるのでは、と心配な声も。確かに2020年1~3月期では過去最低の約17兆円の損失がありましたが、次の4~6月期では過去最高の約12兆円の運用益を上げています。さらに長期的に見ると、運用を開始した2001年からは約70兆円の運用益が上がっています。短期的に見て一喜一憂する必要はありません。
ただ、会社員は収入の18.3%を労使折半で年金として納めており、収入が落ちた場合は納付額も下がり、受給額にも影響が。とは言え、神経質になり過ぎないように。例えば年収が100万円下がることが5年間続いた場合、年金受給額は概算で年2万7000円ダウン。月に換算すると、2250円程度です。生活費を見直すことでカバーできる金額ではないでしょうか。
一方、自営業の人が掛ける国民年金の掛け金は、収入に関わらず一律。きちんと納めていれば、収入減でも年金に影響はありません。もし、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減のため国民年金の納付が難しい場合は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場や年金事務所へ問い合わせを。臨時特例免除により、免除・猶予が可能な場合があります。
※諸条件あり