主役を演じる重責が気持ち良さに変わって
ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』
公演期間/12月29日(木)~2023年1月4日(水)
公演場所/博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
大ヒット映画をミュージカル化した、『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』が博多座で上演されます。日本でのミュージカル版は2014年の初演以来、今回が4度目、博多座では3度目の上演です。
この物語の主人公は、破天荒なクラブ歌手のデロリス。殺人事件を目撃したことで、ギャングのボスに命を狙われます。警察の指示で修道院に身を隠すことになったデロリスは、規律正しい生活を送る修道女たちからは煙たがれる存在。しかし、聖歌隊の歌があまりに下手なことからデロリスが歌唱指導を行ううちに、彼女と修道女たちの間に信頼関係が生まれて…。
日本初演から主役のデロリス役として圧倒的な存在感を放ち、今回も朝夏まなとさんとWキャストで主演をつとめる、森公美子さんにお話を伺いました。
「デロリス役のお話を初めていただいたときに、アメリカのロサンゼルス公演を観に行きました。そしたらスタイル抜群な人がデロリスを演じているんですよ。とてもかっこよかったのですが、なぜ私がデロリスなのだろう、私でいいのかなと不安にもなりました。でも、初演が幕を開けた帝国劇場で舞台のセンターに立つと、すっごく気持ちがいいんです。大きな劇場で主役を演じるのはこの作品が初めてでしたが、これはやめられないと思いました(笑)」
役作りで訪れた修道院でみんなと涙
森さんはデロリスを「とにかくハチャメチャな人間」と言います。
「修道院長の話を聞いても、ペッって唾を吐きながら『ここは最悪の場所だ、地獄だ』って悪態をついている。そんな人間がどんどん変わっていくんです。彼女だけでなくて、修道院という枠の中にいた人たちも、デロリスによって変わっていく。デロリスは特別な人ではなくて普通の人間だけど、修道女たちにはデロリスが必要で、デロリスには修道女たちのきれいな心やきれいな言葉が必要だった。いろんな人に出会って、お互いを尊重し合って、変わっていく。そうやって徐々にいろんなものが高まっていくさまを、すてきに描いていることがこの作品の魅力なのだと思います。それに人は1人で生きているのではなく、何かの支えがあって、誰かのために生きていることを忘れてはいけない、と作品を通してあらためて感じました」
森さんは役作りのために何度か修道院を訪れていたことも教えてくれました。
「修道女の生き方や、どうして毎日祈れるのかということを聞きました。そしたら、『あなたたちも誰かのために歌ってらっしゃる。神様は絶対見ていますよ』という優しい言葉をかけられて…。私たちの歌が役に立つなんて考えてもいなかったので、一緒に来ていたキャストのみんなと号泣しちゃって…」と取材中も思わず涙をこぼす森さん。
最後に福岡の人たちにメッセージをくれました。
「年末年始にある公演です。お忙しい時期とは思いますが、熱いものをお渡しできると思っております。福岡移住を検討するほど福岡が大好きです。皆さんとお会いする日を楽しみにしております」
山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki