5月に入り新型コロナウイルス感染症の数が少しずつ減少しています。真摯な感染対策を続ける国民の真面目さ、紆余曲折はありましたが淡々とワクチン接種事業を進めた国・自治体の努力のたまものだと思います。
コロナウイルスは肺にウイルスが進展するとダメージを引き起こします。いわゆる「コロナ肺炎」です。現在主流のオミクロン株はそれほどではありませんが、それ以前の株では多くの方(特に老人)が犠牲になりました。
新型コロナウイルスが心臓病を引き起こしたという報告も数多くあります。肺炎になると血液中の酸素が不足し、臓器に不具合が生じます。心臓では血液を全身に送り込む能力(ポンプ機能)が落ちて心不全を併発するのです。またコロナウイルスは肺以外の臓器にも直接感染することで機能を低下させるのです。その結果として心筋炎や心外膜炎などの心臓病を発症することがあります。
さらに、全身の炎症は〝血の塊〟血栓をできやすくします。血栓ができると心筋梗塞や心臓に由来する脳血栓症も発症します。心臓病を発症した場合、心臓の働きを強める薬や心臓を保護する薬、あるいは心臓の負担を減らす薬などを使い分け、少しでも早くウイルスの活動が治まるのを待たなければなりません。血栓ができやすい状況になったり、血栓ができたりした場合には血栓をできにくくする抗凝固剤も併用します。
当院にもコロナ後遺症に苦しむ患者さんが来院されています。息切れ、胸の違和感やドキドキ感あるいはめまいなど心臓病を疑わせる症状が続いているのですが、心臓の検査をしても異常がないのです。こうした患者さんに対しては、しっかりと訴えを聞き不安が和らぐようにしています。また、漢方薬を使って改善した症例もあります。
我々は日々どのように心掛けて生活すればよいのでしょうか? 最大の防御はうがい、手洗い、マスク装着です。また可能な限り人混みを避けるようにしましょう。心臓病の患者さんは規則正しい生活を送ること、医師に処方された内服薬をきちんと服用し心臓の状態を常に安定させることを心がけてください。今更かもしれませんが、ワクチン接種をしてない人は接種をすることをお勧めします。
担当医
ふなこし内科・循環器内科
院長 舩越 元(ふなこしはじめ)先生
協力:福岡市医師会