ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』
公演期間/4月22日(金)~25日(月)
公演場所/博多座(福岡市博多区下川端町2-1)
「分断」が叫ばれる今だからこそ観てほしい
経済格差やコロナ禍に対する考え方など、社会の分断が叫ばれる今だからこそ観てもらいたいミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』が博多座で公演されます。
この話の主人公は、南仏のゲイクラブ『ラカージュ・オ・フォール』のオーナーであるジョルジュと、看板スターのザザこと、アルバン。2人は男性同士ですが20年間同棲している、事実上の夫婦。ジョルジュには過去に女性との過ち(?)から生まれた息子のジャン・ミッシェルがおり、アルバンは母親代わりとして愛情を注いできました。そんな息子が結婚を宣言。しかし、結婚相手の両親はゲイクラブの取り締まりを主張する政治家夫婦。ジャン・ミッシェルは相手の両親と会うときだけは普通の家族に見えるよう、アルバンに叔父として振る舞うことを求めることで次々に騒動が巻き起こります。
ジョルジュ役をつとめるのは、今回で5回目の出演となる鹿賀丈史さん。本公演について鹿賀さんはこう話します。
「こういう難しい時代に、この作品を公演するということは、一層インパクトがあるのではないでしょうか。それは今、人と人との分断であるとか、国と国との分断であるとか、そういうことがどんどん深みに入っていっている。でもこの作品では、人とは人を愛するものであるということ、周りの人を大事にするということ、そして自分は自分で強く生きていくということが描かれています。このメッセージをお客様に面白おかしく伝えたいですね」
俳優として社会に伝えたい思い
『ラカージュ・オ・フォール』は、LGBT(性的少数者)の問題を取り上げた作品。鹿賀さんは35年前にも本作の脚本を手掛けた作家・歌手ハーヴェイ・ファイアスタインの自伝的作品『トーチング・トリロジー』の中で、ゲイの主人公を演じています。
「当時、楽屋に来た何人かが『いやらしい』『何これ?』と言っていました。でもそれから30年ほど経って、『ラカージュ・オ・フォール』に出演したときは、『いやらしい』と言って帰ってしまうお客様はいらっしゃらない。とは言え、日本はLGBTであるとか、色んな問題に対する動きがまだまだ遅れているという思いもあります。俳優としてやるべきことは、日本の社会に対して何を発するかということだと思っています。今の日本の国というものをしっかり捉えて、その上で何をどう発信するかということを考えてやっていきたいですね。どんなことがあろうと自分の思い、役者としての思いは曲げずに稽古を積んでいきたいと思います」
最後に鹿賀さんは「非常に問題提起を含んでいる作品ではありますが、ミュージカルとして楽しく面白い作品でもあります」とも言います。相手役のアルバンを演じるのは、鹿賀さんと同じく劇団四季出身で49年来の仲である市村正親さん。息のあった掛け合いもお楽しみに。
山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki