余命少ない女優が最後の夏を過ごした、ポルトガル。その美しさに魅了される
Ⓒ2018 SBS PRODUCTIONS / O SOM E A FÚRIA
Ⓒ2018 Photo Guy Ferrandis / SBS Productions
映画『ポルトガル、夏の終わり』
■監督:アイラ・サックス
■出演:イザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ 他
■配給:ギャガ
◎KBCシネマほかにて近日公開予定
閉塞感漂う昨今、ちょっと鬱々している自分に気が付きます。映画を観ることもままならない日が来るなんて、夢にも思いませんでした。その様な中にあってご紹介するのは「ポルトガル、夏の終わり」。
舞台は、世界遺産、ポルトガルの避暑地シントラです。
シントラに行った友人に、どんなところかと聞くと、首都リスボンから日帰りが出来る距離で、「人々は優しく、緑豊かな小径、石畳があり、古城、美しい海岸線と、心が和む町であった」と語ってくれました。
美しい景観の中で繰り広げられる人間模様は、見応えがあります。本作では、フランスの大女優イザベル・ユペールが、自らを映し出すような大女優役で登場。映画の冒頭、美しいホテルのプールに水着を脱ぎ捨て飛び込む一人のレディこそ主役のフランキー(イザベル・ユペール)。彼女は余命宣告を受け、心に期するものを持って、シントラに滞在しています。年齢を超えた彼女の身体、陽の光とプールを囲む緑の美しさに、身も心もウットリとします。
このホテルに彼女は家族・友人を招待しています。再婚し夫と義理の娘夫婦、孫、前夫と実の息子、友人とその恋人。何とも複雑な関係です。映画はそれぞれの人間の動きをクールに描いて行きます。
私は途中まで、何の意図でこの人たちをフランス・アメリカからこの地に呼んだのか分かりませんでした。中盤辺りから、それぞれの苦悩が明らかになってきます。扇の要がフランキーと分かった処から、彼女の企みが見え隠れして霧が少しずつ晴れてきます。
そして何といっても、ラスト。眼下に海を臨む神聖なペニーニャの山、その山頂にフランキーは全員に集まるように呼びかけます。彼女を入れて9人が初めて一堂に会し、燃えるような夕陽を見つめながら、ユーラシア大陸の最西端に佇みます。一人遠くから8人の動きを見るフランキーの姿。彼女はその人達の動きの中に、ある結論を見出します。
私の年代になると、“死期”を意識しないといったら嘘になります。人生の折り返し点を遥かに越しています。でも、やっぱり今を大切に生きたいと思っているので、人生のけじめは、どこかまだ先の事と片付けている自分がいます。ですが、時間があるような無いような…。
佐久間みな子
KBCアナウンサーからKBCシネマにも携わり、現在はフリーアナウンサーへ。会話塾の講師を務める他、コミュニティラジオ天神のパーソナリティとして活躍中。
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