生涯、自分の足で歩ける体であり続けるために欠かせないのが「骨」の健康。
今日から骨を鍛えましょう。
加齢と共に衰える骨
人の骨量は20歳前後でピークを迎え、その後40歳代半ばまではほぼ一定を保ち、50歳前後から減少するといわれています。
加齢により骨量が減少するのは、女性ホルモンの分泌量減少に加え、カルシウムの吸収が悪くなる、若い頃よりも食事量や運動量が減るといった生活習慣の変化も関係します。
特に女性は、閉経後10年ほどの間に骨量は著しく減少し、骨粗しょう症と判定される領域に進行していくことになります。
骨折はなぜ怖い?
骨が衰え骨粗しょう症になると、ちょっとした転倒でも骨折してしまいます。
高齢者に多い骨折の部位は、太ももの付け根(大腿骨頚部)、手首、背中、肩の骨です。特に太ももの付け根を骨折すると立つことができなくなり、要介護や寝たきりになる危険が高まります。寝たきりになると、認知症を発症する可能性も高くなります。
骨折することで死に至るわけではありませんが、その後の生活の質を著しく落としてしまうのです。
大切な骨貯金を使わないために
私たちの体は、食べ物から摂取したカルシウムが不足すると、骨に蓄えられているカルシウムを溶かして補おうとします。「カルシウムを摂らないと骨量が減る」といわれるのはそのためです。いかに骨に蓄えられているカルシウム(=骨貯金)に頼らない生活をするかが、質のよい骨を保つ鍵となります。
年を取ってからではもう手遅れ?
骨は肌の細胞と同じように、古い骨を壊して新しい骨を作る「骨代謝」を繰り返し健康を保っています。約5カ月かけて一定の形と密度を保ちながら骨を再構築し、おおよそ3~5年の周期で体中の骨がつくりかえられています。
加齢により代謝のバランスは崩れやすくなるものの、骨代謝自体はいくつになっても続きます。つまり、骨は何歳になっても生まれ変わることができるのです。
骨粗しょう症とは?
体内のカルシウムが不足して骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。特に閉経後の高齢の女性に多くおこります。
痛みなどの自覚症状がないため、定期的に骨密度検査を受けることをおすすめします。
■ワン・ツー・チェック
あなたの骨は大丈夫?1つでも当てはまったら専門医へ相談を。
身長低下チェック
身長が縮んでいませんか?
2cm以上低くなっていたら要注意!
姿勢チェック
壁に背中を付けて立った時に、壁に頭は付きますか?
後頭部が壁につかなければ要注意!
骨を鍛える食事
「カルシウム」は体内で吸収されにくく不足しやすい栄養素なので、腸での吸収を助ける「ビタミンD」、骨への沈着を助ける「ビタミンK」が必要です。骨の土台となるコラーゲンを作る「タンパク質」とともに、バランスよく摂取することが大切です。
■丈夫な骨づくりに欠かせない栄養素
※食事指導や治療を受けている方は、医師や管理栄養士に相談の上、指示に従ってください。
参考/骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版、日本医師会雑誌第151巻・第11号 2023年2月、日本食品標準成分表 2020年版(八訂)
■プラスで吸収率&栄養アップ
キノコ類 + 日光
キノコ類は調理する前に2~3時間日光に当てるとビタミンDが増加します。生でも干しものでも、栄養もおいしさもアップ!
カルシウム + クエン酸
カルシウムをクエン酸が包み込むことで吸収率がアップするといわれています。酢やレモンなどを合わせると、体も喜ぶ一品に。
ビタミンD・ビタミンK + 油
ビタミンDとビタミンKは脂溶性の栄養素。食材を油で炒めたりちょい足しすると効率よく腸から吸収されます。
■1日3食バランス良く
1日3食しっかりと食べることで栄養素を体にとり入れるチャンスも増えます。やせすぎは骨粗しょう症の危険因子の一つ。適正な体型を維持できるよう、主食、主菜、副菜を意識したバランスの良い食事を心がけてください。
■取材協力
福岡市健康づくりサポートセンター
管理栄養士 肘井 千賀さん
骨を鍛える運動
丈夫な骨づくりに役立つのは“骨に刺激を与える”運動です。骨は適度な負荷を与えると骨をつくる細胞が活発になって強くなり、逆に負荷をかけないと弱くなるという性質があります。激しい運動ではないからこそ、毎日コツコツ継続することを目標にしましょう。
■骨芽細胞を活性化し骨密度を高める かかと落とし
目安
10回1セット、1日3セット
❶足を揃えて真っすぐ立ち、手は自然にたらす。目線は前へ。
❷かかとを上げてつま先立ちになる。 ※不安定な場合は、テーブルやイスなどにつかまってもOK。
❸足の力を抜き、かかとをストンと地面に落とす。脱力感が大切。
POINT
いつでもどこでも手軽にできて効果は抜群。かかとに少し響くような衝撃を感じることで骨に直接刺激が加わり、骨密度アップにつながります。
■足の付け根の骨を強くする 片足立ち
目安
1セット(左右1分ずつ)、1日3セット
❶テーブルやイスなど安定したものにつかまり、両足をそろえて立つ。
❷片足を5~10cm程度上げて、そのまま1分間キープしたら、足を下ろす。体が傾かず、骨盤が水平になっているのを意識して。鏡で確認しながらやるとより効果的。
POINT
骨以外にも弱りやすいお尻周りの筋肉への刺激が良好です。バランス感覚の向上にもつながり、より転倒防止効果も高まります。
■筋力と骨力を効率よく鍛える ゆるスクワット
目安
10回1セットから(慣れたら1日3セット)
❶両足を肩幅よりやや広めに開き、つま先はやや外側に。
❷息を吐きながら4秒かけて腰を落とし、息を吸いながら4秒かけて元の姿勢に戻る。腰を下ろす際、膝とつま先の向きがそろうように、膝を90度以上曲げないように気をつける。
POINT
お尻を後ろに引くようなイメージで腰を落としましょう。両手を前に伸ばしてバランスをとったり、イスの背につかまりながらすると安心です。
■運動で注意することは?
健康寿命を一気に縮めてしまう「骨折」をしないために、骨と筋肉を鍛えて転倒しにくい体を目指しましょう。同時にトレーニングで関節を傷めることのないよう注意も必要です。医師や理学療法士、健康運動指導士など専門家の指導も積極的に参考にしてください。
■取材協力
南川整形外科医院
理学療法士 城ヶ﨑 政光さん
骨貯金を減らさない生活習慣
骨を丈夫にするために食事や運動に気を付けていても、毎日の何気ない生活の中で思わぬマイナス行動をしてしまうこともあります。
少しの心掛けで骨密度の低下のスピードを緩やかにしたり、骨粗しょう症のリスクを減らすことができます。
日光浴をする
日光(紫外線)を浴びると体内でビタミンDが合成されます。紫外線を毛嫌いせず、食事で足りない分を日光浴で補いましょう。
良質な睡眠
直接骨に働きかけて骨を強く成長させる「成長ホルモン」が分泌されるのは睡眠中。深い睡眠をしっかりとることが大切。
とりすぎ注意
塩分、アルコール、カフェイン
とりすぎるとカルシウムを体外に排出してしまいます。
加工食品・スナック菓子など
食品添加物として使用されるリンは過度にとるとカルシウムの吸収を阻害。
気を付けよう
過度なストレス
体からカルシウムを失わせ、骨を弱くしてしまいます。
食事の偏りや過度な制限
若い頃に食事制限ダイエットしていた人も注意。