糖尿病とがんの蜜な関係
担当医 福岡市健康づくりサポートセンター
センター長 井口 登與志先生
食生活の欧米化や、身体を動かさなくなったことにより激増している糖尿病。その原因の一つが肥満ですが、日本人は欧米人に比べて血糖値を下げるインスリンを分泌する能力が小さいため軽度の肥満でも糖尿病になりやすいとされています。今、国内で糖尿病が強く疑われる成人は約1千万人。この糖尿病で“がんが増えている”ことをご存じですか?実は糖尿病のある人は、ない人に比べ男性で1.27倍、女性で1.21倍もがんになるリスクが高いのです 。
なぜ糖尿病の人ががんになりやすいのか。詳細はまだ明らかではないのですが、肥満を伴った糖尿病では血糖値を下げるインスリンが正常に働かない状態(インスリン抵抗性)になっており、逆に血中インスリンが高値となっていて、それががんの増殖を促進しやすいから。また、糖尿病の特徴である高血糖が酸化ストレスを増加させ、結果遺伝子の変異が生じてがんの発生につながるから、などの機序が推定されています。
糖尿病は上手く血糖コントロールをすれば、糖尿病からおこってくる様々な合併症を抑えられる病気。最近では、糖尿病と認知症や骨粗しょう症との関連も指摘されています。バランスのとれた食事と運動、禁煙、節酒を心掛けること。糖尿病だけでなく、がんの予防にもつながります。米などの複合炭水化物は食物繊維も豊富で、バランスよくとれば良いエネルギー源に。糖質制限をするならジュースや菓子類といった単純糖質を。脂肪摂取では、飽和脂肪酸が多い加工品肉類は控えめに。和食は塩分に注意、だしを使用した和食はおすすめです。
糖尿病はほぼ自覚症状がないため一年に一回でも健康診断を受けることが早期診断、予防には大切。糖尿病になっても上手く付き合うことで重症化を防げば、一病息災、逆に長生きできる病気です。
※1 2016年国民健康・栄養調査
※2 多目的コホート研究(JPHC Study)
協力:福岡市医師会