朝散歩の酔い心地は格別だ
9月号のごみ拾い散歩は、ぐらんざ編集部に「ごみ拾い感激しました」と読者の方から励ましのメッセージをいただくなど反響があり恐縮している。でも、善行ばかりしているわけではない不良シニアなので、知り合いの妹さんの話を聞いて“荒くれ散歩”を思いついた。
その妹さんは関西で保育士をしているそうだ。同時に子育て中の主婦でもあるという。私も友人が運営する保育園の理事をしているから実感している。現場で働く保育士さんたちがどんなに忙しい思いをしているのか、理事会で報告を受けるたびに大変な仕事だということを…
その妹さんは保育士の仕事を終え家に帰ってから洗濯、掃除に加え食事の支度、子どものお風呂に寝かしつけなどのあらゆる家事をするそうだが、最初にストロング缶をプシュッとあけて飲み干すのだそうだ。その後、一気にすべての家事を終わらせてから寝床になだれこんでいくルーティンを続けているそうだ。思わず私は「言葉は悪いけど、それってドーピングだよね」と言ってしまった。
その話に着想を得たわけではないが、健康管理も兼ねて続けている散歩だが、気が乗らない日もある。そんな日はストロング缶に協力を仰ぐことにしている。長く続いた猛暑も和らぎ、早朝の室見川河川敷を歩くには良い季節になった。川のせせらぎ、鳥のさえずりに耳をすませながら空が明るくなる様子は格別だ。
そんな中で、歩き疲れた私は川沿いにあるコンビニに駆け込む。保育士の妹さんにならいストロング缶を買い込んで、川沿いの広場のベンチに座って缶のタグを引く。喉が乾いているので一口、二口、三口ぐらいで空になる。私の場合はドーピングというより精神安定剤だ。気分がよくなり、ゆったりした時間を過ごすことができる。
ベンチに座ったまま何も考えず〝無〟の状態にもなる。これを瞑想状態というのかも知れないが、長い時間を過ごしても苦にならない。軽い酔い心地なので、そのまま家に帰ってシャワーを浴びてすっきりして読書や朝寝を決め込むこともある。
フランシス・フォード・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」で、サーフィンが趣味の軍人として強烈な印象のキャラクターだったキルゴア中佐は「朝のナパームの匂いは格別だ」ととんでもないことを口走っていた。私も「朝散歩のストロング缶の酔い心地は格別だ」とカミさんにうそぶいている。
文・写真岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
代筆屋業も開業しスピーチ原稿などの執筆や情報誌編集長としても奮闘中。