19世紀末のパリで開花した市民の美術 印刷技術の発達がもたらした“美しき時代”!
華やかで猥雑。そんな都市文化が開花したのが、19世紀末のパリでした。血なまぐさいフランス革命から1世紀が経ち、美術も王侯貴族から市民に開放されます。
その潮流を象徴する画家のひとりが、トゥールーズ=ロートレックです。貴族出身で身体的なハンディを抱えていましたが、多色刷りの石版画で時代の寵児になりました。
4人の踊り子が脚を蹴り上げている左の絵『エグランティーヌ嬢一座』は、1896年のロンドン公演のためにデザインしたポスターです。ロートレックは酒場やダンスホールに入り浸り、踊り子たちとも親しく交際しました。線や構図には、当時高い関心が寄せられた浮世絵の影響もうかがえます。
その下に紹介した『「虹」フォリー・ベルジェール』は、近代ポスターの父といわれるジュール・シェレの高さ1.2メートルもある大判の作品です。フォリー・ベルジェールはバレエやパントマイム、サーカスも上演した劇場の名前で、印象派の画家マネもバーのメイドを描いています。シェレは千点以上も制作したといわれ、石版画の技術向上に貢献したとして勲章も授与されました。
季節を女性の姿で表現した連作『四季』は、アルフォンス・ミュシャの代表作です。髪を風になびかせた優雅な女性の姿は、時代を越えて世界中で愛されています。
“美しき時代”と称されるベル・エポックのパリは、劇場やダンスホールなどの興行が盛んになり、街がポスターで覆われたといわれます。ポスターのサイズを縮小して記載した月刊誌も発行され、コレクターの人気を集めました。1900年は、パリで5回目の万博が開催され、映画や電気照明、エスカレーターといった新しい装置が相次いで登場しました。技術革新を市民が享受した時代は、大量殺りく兵器が使われる第1次世界大戦で幕を閉じます。
ポスターはコマーシャルの先駆けであり、都市文化を写す鏡です。今回展示されるパリのレガシーからは、心の安らぎと教訓が受け取れそうです。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
《エグランティーヌ嬢一座》1896年
ジュール・シェレ
《「虹」フォリー・ベルジェール》1893年
アルフォンス・ミュシャ
《四季》1896年
展覧会にあわせて小倉昭和館で『ディリリとパリの時間旅行』『ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝』の2本立て上映
(1月7日まで 休館日:火曜・大晦日と元日)
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)
福岡近郊博物館・美術館のスケジュール
※( )内の料金は、特別・前売り・団体料金、詳細はお問合せください
■九州国立博物館
新春特別公開 徳川美術館所蔵 国宝 初音の調度
2022年1月1日(土祝)~ 1月30日(日)
●一 般 700円
●大学生 350円
●高校生以下満70歳以上無料
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)
■福岡市美術館
ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
~2022年2月13日(日)
●一 般 2,000円
●高大生 1,300円
●小中生 800円
休館日/月曜、12月30日(木)〜
1月1日(土祝)
※月曜が祝日・振替休日の場合は、
翌平日が休館日 ☎092・714・6051
■九州歴史資料館
「木簡からみた古代の大宰府」
《重文》大宰府跡出土木簡
~2022年2月13日(日)
●一 般 210円
●高大生 150円
●中学生以下・65歳以上無料
休館日/月曜、年末年始
(12月28日〜2022年1月4日)
☎0942・75・9575
■大分県立美術館
GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?
《愛のアラベスク》 2012年 作家蔵
~2022年1月23日(日)
●一 般 1,200円(1,000円)
●高大生 1,000円(800円)
●中学生以下無料
休館日/なし
☎097・533・4500
■北九州市立美術館 本館
ロートレックと ベル・エポックの巴里‐1900年
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
《ディヴァン・ジャポネ》
1893年 個人蔵
~2022年2月6日(日)
●一 般 1,200円(1,000円)
●高大生 800円(600円)
●小中生 600円(400円)
休館日/月曜・年末年始
※月曜日が祝日・振替休日の場合は
翌平日が休館日
☎093・882・7777
●新型コロナウィルス感染拡大防止のため、休館・展覧会が中止・延期される場合があります。
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