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【ぐらんざ人】怪談家 稲川淳二(いながわじゅんじ)

【ぐらんざ人】怪談家 稲川淳二(いながわじゅんじ)


MYSTERY NIGHT TOUR 2021『稲川淳二の怪談ナイト』

日時/10月8日(金)怪場18:00、怪宴19:00
場所/ももちパレス 大ホール
料金/前売り券5,800円、当日券 6,000円
問い合わせ/092・732・1688(スリーオクロック)

29年連続開催される「怪談ナイト」

 怪談家・稲川淳二さんが10月に29年連続となる、公演『稲川淳二の怪談ナイト』を開催します。公演がこれほど長く続いていることに、稲川さんは「ファンの皆さまのおかげ」と言います。

 「公演は私1人でやっているように見えますけど、一緒になって動いてくれるスタッフと、ファンの方に支えられているんですよね。ご常連の中には、20何年ずっと来ているという方が何名もいらっしゃいます。それに、演じる側、聴く側と分かれているのではなくて、その時間を一緒に作っているんですよ。みんなで『わわわ、怖い』って感じながら、全員で空気を作っている。なんだか知らないけど、楽しい時間なんですよね。ただ私1人が話してるだけなら、こんなに長く続かないですよ」

コロナ禍だからこそ感じたありがたさ

 昨年はコロナ禍での公演。さまざまな公演が軒並み中止される中、ファンからの強い要望に応える形で、『怪談ナイト』は開催。

 「スタッフのみんなが苦労して、考えられるコロナ対策を全部やりました。去年はチケットも早い段階で売れていたから、後からお客さんに座席の変更をお願いしてね。カップル、仲がいい人たちが隣同士に座る予定だったのにバラバラになっちゃう。でも、誰も文句を言わない。公演が始まったら、いつもは大きな声援を送ってくれるんですが、それができない分、一生懸命手をたたいて待っていてくれる。帰るときも密を避けるために、時間差での退場。みんな黙って待っていてくれてね。アンケートには『ありがとう。また来るから頑張って』って書いてある。こんなの泣けますよね。力になりますよ。私は本当にいいファンといいスタッフに救われています。だから、今年もできるんですよ」

怖くて、優しくて笑える懐深い怪談

 気になる今年の公演は、どんな怪談が用意されているのでしょうか。

 「今年は面白いですよー。お世話になっている芸能界の大先輩から10数年前にもらった、戦後間もないころの新聞がありましてね。その新聞に怪談の連載が載っているんです。その連載を担当した若い新聞記者ご自身の体験が書いてあって、それが面白い。でも、これから怖くなるぞ、というところで話が終わっているんです。連載の続きの記事がないんですよ。それから当時の新聞や雑誌なんかの資料を集めたり、街のことを調べたりしましてね。だんだんまとまってきて、今年ようやく紹介できるようになりました。それがまた、70歳を超えた今だからこそできる、艶っぽい話なんですよね。他にも父と息子の優しい怪談もあります。これは私の後輩が体験した、優しくて胸に残って泣ける話なんで、成功したらうれしいなと思います。あとはけっこう笑える話もありますね」

 怖くて、優しくて、そしてクスっと笑える。ファンから愛され続ける「稲川怪談」の魅力は、懐の深さにあるのかもしれません。


山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki

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