豪傑に妖怪、伊達男に鉄火肌の美人 江戸っ子の洒落とユーモア満載!
感染防止か経済活動か、悩ましい心境で迎える新年です。江戸時代の庶民の気持ちにたとえるなら「河豚は食いたし命は惜しし」でしょうか。
刺身に唐揚げ、それに鍋と、ふぐは関門の冬の味覚の代表です。そのふぐを、歌川国芳は猫の姿で表現しました。左に示した絵、題は『猫の当字ふぐ』です。「ふ」に3匹、「ぐ」は7匹の猫が登場します。無類の猫好き絵師の洒落を、ぜひ会場でご確認ください。
国芳は15歳で浮世絵の世界に弟子入りしますが、名声をつかむのは30歳になってから。ヒット作は当時流行した小説「水滸伝」を、今風にいえば“劇画化”したシリーズでした。以来、豪傑や合戦、妖怪退治に怨霊・幽霊、伊達男に鉄火肌の美人と、大判三枚続きの大胆な構図も取り入れて、縦横無尽に描きます。
“火事と喧嘩は江戸の花”とうたわれた時代、町火消とも親しく交流する親分肌で、ユーモアに富んだ規格外れの浮世絵は、江戸っ子の人気を集めました。その背景には、歌舞伎の劇場や寄席を郊外に移転させ、徹底した倹約を命じた天保の改革があります。
ポスターの上段の『朝比奈小人嶋遊』は、小人の大名行列を、勇猛を讃えられた鎌倉時代の武士、朝比奈義秀が見下ろしています。ガリバー旅行記を彷彿させるこの絵は、幕府政治への痛烈な批判です。国芳は、度重なる厳しい規制をくぐりぬけ、パロディ精神満載で民衆の心を代弁しました。
幕末は、海外の様子も届いていました。大きな象が描かれた『二十四孝童子鑑 大舜』は、中国の故事に由来しますが、赤い服の少年をはじめ全体的に洋風な感覚です。国芳は蘭学者の情報も利用していたと言われます。
この展覧会は、開国間近の不安なムードを痛快に吹き飛ばした国芳の作品約150点が展示されます。時空を超越した浮世絵で、コロナの憂さを晴らしてはいかがでしょうか。
《猫の当字 ふぐ》 天保末(1841−43)頃
《二十四孝童子鑑 大舜》 天保14−弘化元年(1843−44)頃
繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)
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■九州国立博物館
奈良 中宮寺の国宝
国宝 菩薩半跏思惟像(伝如意輪観音)
飛鳥時代 7世紀 奈良・中宮寺
撮影:佐々木香輔
1月26日(火)~3月21日(日)
●一般 1,800円
●高大生 1,200円
●小中生 800円
休館日/月曜
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)
■福岡市美術館
ヒグチユウコ展 CIRCUS
ヒグチユウコ《Circus》2018年
ⒸYuko Higuchi
12月24日(木)~2月7日(日)
●一般 1,200(1,100)円
●高大生 900(800)円
●小中生 500(400)円
休館日/月曜、12月28日(月)~
1月4日(月)(ただし1月11日(月祝)は開館、
12日(火)は休館)
☎092・714・6051